コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 秘密 ( No.350 )
日時: 2014/05/16 19:27
名前: 雪 (ID: rJoPNE9J)

いい加減慣れてきた車に再び腰を下ろす。

広過ぎて、シートも固くどうにも落ち着かない。

隣に腰かけているの、少し少女的な印象を受ける少年。

名前はトール。

1言で言えば父のもとに仕えている奴だ。

腰まで伸びた金髪に少女の様な華奢な体。

けれど戦闘能力も身体能力も並はずれている。

金色の髪と相まってきっちりした黒のジーンズに黒のストールを着用している。

趣味は戦い。

なんでも自己鍛錬だけでは限界があるらしく、戦う事によって経験や力を得るらしい。

といっても全てを流血沙汰で終わらせるほどひねくれてもいない。

お化け屋敷も苦手らしい。

だが力を得るためなら自ら争いを起こす。

父のもとに仕えている、といっても彼自身は別に忠誠心なんてものはない。

敵対勢力の多い父の下に着くことで力を得ようと考えているのだ。

実力的に言えば父のもとについてる中で1番だ。

強過ぎる力を持っていてロクに戦える相手がいないことを日々嘆いている。

戦闘が目的と言うが敵以外の殺生は好んでいないらしく、救える人は救える主義らしい。

そう言った旨の話をずっと隣で話していたが、反応が薄くて退屈したのか運転手に矛先を向けた。

「思ったんだけど、アリスちゃんって乙女だよね。」

なんだか本人を隣に随分失礼なことを聞いている。

「トール。」

「ん?」

すっとぼけたような表情をしている。

こんな奴がかなり武闘派だと言われても笑い飛ばせそうだ。

警戒心と言ったものが持てない。

けれど私にはなんだかそう言った空気が感じられるのだ。

「父は…何時まで私を振り回すんだろう…」

窓の外を眺める。

見たこともない町だ。

「しらねぇよ、んなこと。」

一蹴だった。

「って言うか話のチョイスそれだけ?退屈すぎるんだけど。
というか何でこのトール様直々にお迎えにいかなきゃならんのか!マジ意味分かんねー」

私に言われても…

この男に関しちゃ関わると色々危ない。

あの時ケイが気絶したのはある意味正しい。

あのまま起きているのはまずい。

「エリスは?」

「も〜先行ってる。」

年相応の少年の顔。

今は好きでこの世界に浸っている。

きっと抜ける気はないだろう。

父がいなくなってもきっと彼はどこかで戦いを続けるのだろう。

それもいい。

「お前は…何時まで父のもとにいる?」

「さぁーな。ただテオドールの傍にいると強い奴に出会えるし、救える奴は救える。」

力を手に入れる。

それと同時に救える人は救う。

「…お前は良い奴だな。」

「まったまた〜!」

トールはまたまたそれを笑い飛ばした。

案外本気で言ったんだがな。

この世界に染まりつつも人を助けるなんてそんな奴は決して多くない。

「ただ…あの3人のことだけど…あまりエリスの前で話、しない方が良いぞ。」



キキッと車が止まる音にかき消されてほとんど聞こえなかった。

「だってあいつ…」

何を言ったか聞き取れなかった。

ガチャッと扉が開いた。

「ついたぞ。」

結局それについては有耶無耶のまま私は車から降りた。