コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 秘密 ( No.387 )
日時: 2014/10/31 19:50
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

「…そう言う訳でこっちが雪白凛でこっちが灘万里花。」

屋敷を初めて抜け出したアリスは初めて会った時以上にびくびくしていた。

屋敷を出たのは初めてらしい。

特別な事情らしい。

けれど自身もアリスに隠していることがあるから深く追求はしない。

「っで、こっちがアリス。」

びくびくしているアリスは再び背の後ろに隠れた。

けれど背中にいた彼女は空を見上げていた。

星を見ていた。

まるで初めて星を見たようだ。

表情は相変わらず乏しいままだったけど、きっとその表情は目をキラキラさせているというのだろう。

けれどその時は表情は相変わらず乏しかったため、その時は全然意味が分からなかった。

気付けば彼女は背中から出て星を見上げていた。

「…綺麗ですね」

最初はビクリッと震えたが小さく微笑んだ。

笑っているというよりか苦笑い、と言った感じだ。

でもいつの間にか緊張が解けたのか軽く微笑んだ。

この頃はまだ微笑むことしかできていなかったが、それがアリスなりの精一杯の笑顔だったのだろう。

「…あ、ああ」

「行こ、アリス」

手を引いて展望台まで連れていく。

そうやって4人で星を眺めた。

アリスは本をたくさん読んでいた。

1つ1つの星の名前をためらいがちながら教えてくれた。

ポラリス、ミラ、聞いたことない星ばかりだった。

今となっては分かるがポラリスとは北極星のことだ。

「アリスって名前カッコいいですよね…私も…万里花というなら…マリーとか?」

「良いんじゃないか?」

リンがそう言うとマリーは嬉しそうに微笑んだ。

この頃から好きだったのかな。

「リン、とケイ!…気に入りました♪」

こうやって今のあだ名が定着したのだ。

それから少しずつよく会う様になった。

音楽で意気投合して作曲を始めた。

アリスの声は綺麗だったし、歌もうまかった。

そうこうしているうちに何年もたってアリスも自然に打ち解けてきた。

乏しかったはずの表情も段々と増えていき、屋敷にいる時間もどんどん少なくなってきた。

嬉しかった。

ずっと笑わせたかった。

その想いが、きっとずっと自分を支えてくれていた。

不思議な女の子だった。

何時もたわいのない話をしてその度いろんな言葉で助けてくれた。

支えてくれていた。

ずっと家で泣いている母と2人きりだった。

外に出てアリスと一緒にいるときだけ沢山の表情を身につけた。

アリスの傍はとても心地良かった。

彼女は人の出生とか全然興味が無いからとても気が楽だった。

何時だって頭に浮かぶのはアリスの顔だった。

とても心地よかったし、ありのままの姿でいられた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ここのこと…2人は知らないのか?」

ケイは首を縦に小さく振った。

キィッと錆ついた門を開けると変な音がした。

「前…マリーが言っていたんだ。付き合う前から。私がこの気持ちに気付く前から。
まるで恋人みたいだったり、恋人通り越して夫婦みたいだって。」

少し恥ずかしい。

「普通の仲のいい男女を通り越してるって。」

私がケイに向ける感情の根底はそもそも感謝や恩返しとか言う感じに近い。

恋とか友達とかそういう気持ではないはずだった。

一番最優先されている気持ちはケイを傷つけたくないだったと思う。

だけどそれから色んな気持ちが混ざって好きになった。

「…全く…一体何時から好きになったのかな…」

中に入ると蜘蛛の巣や埃が積もっていた。

「どうかしたか?」

「ちょっと…気になることがあって…」

牢越しにこよみと呼んでくれた。

けれどこよみの名前を使い始めたのはこの国に来てから。

じゃあ、この国に来てから会ったんじゃないのか?と思った。

つまりここで母とあったのではないだろうか、という事だ。

「ここが…牢か…」

アレクシスのせめてもの良心が痛んだのだろう。

使った覚えはない。

人の記憶とは空いたところを適当な記憶で埋める。

アニエスの牢で母に会ったときと記憶がごちゃ混ぜになった、と言う可能性もある。

「位置的にはここら辺かな…アリスと出会ったのは。」

近辺の部屋に入る。

あっ、と思わず声を挙げた。

並べられた本。

上まで吹き抜けになっていて階段がらせん状に渦巻いている。

床にも足場が無いくらいたくさんの本が合って何冊かは開かれたまま放置されている。

「…忘れていた。どうして忘れていたんだろう…」

ずっとずっと大事な記憶。

どうして…忘れていたんだろう。

こんなに沢山のことが合ったのに。

ケイと出会ったり…母とあったりしたのに…

首からロケットを外す。

コインの形をしていて中に母の写真が入っているものを。

「…ケイ。少しの間…ここにいてくれないか…?」

「どうするの…?」

「母にこれを返す。…もしかすると母だってきっとここに来るかもしれない。」

ゆっくりと階段を上る。

高鳴る鼓動を抑え込み。

深く息を吸って、一段一段階段を上る。

最上階は天井がガラス張りになっていて、夜だから今は星が良く見える。

窓もあり、その外には広大なテラスが広がっていた。

「…ママ」

小さく呟くとロケットを置いて再び階段を下りた。

大丈夫。

私には指輪がある。

これが私に…力をくれる。

ケイの過去も知った。

それにおける推論もたった。

今度はこっちの番だ。

今度は私が圭を助ける番だ。