コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.391 )
- 日時: 2014/08/05 16:38
- 名前: 雪 (ID: Dn4Rc0M6)
「…私の実の父親って奴はさ、昔は優しい人だったらしいんだけどね。
少なくとも再婚してからは暴力をふるう様になったんだよ。」
秋月は本当に事情を話しだした。
そう口にしてからちょっとだけ口をつぐんだ。
「圭と私の両親、2人はまぁ…大恋愛って言うのをして。」
大…恋愛…
圭の話からは信じられない話だった。
けれど確かに一度は夫婦になったのだから別におかしい話ではないのかもしれない。
「でもまぁ、色々あって2人は別れたんだ。ここら辺は誰も話したがらないから良く分からないんだけど。」
秋月の顔は少しだけ悲しげに歪んだ。
「別れても未練があったのかな。母は再婚もせずに圭に暴力をふるっていた。
そして父もすぐに私を想ってか再婚した。…元々相手がいたのかもしれないけど」
秋月は自虐的に笑った。
彼女は彼女で悲しい人生を歩んできたのだろう。
「再婚のせいかもしれないけど父が暴力をふるう様になった。
新しい母はとても優しい人だった…けれど父が本当に自分を愛しているのか、疑問に思った。」
当たり前だ。
結婚してから酒癖が悪くなって暴力をふるう。
きっと…圭の母を忘れられなかったんだ。
「そう思って苦しんでいた。父の酒癖はどんどん悪くなっていった。
やがて母は病に倒れ、亡くなった。」
目を伏せた。
泣きそうな悲しそうなおかしな顔。
でも、少しだけ彼女は笑っていた。
悲しそうだけど。
笑っていた。
「私は元の母も新しい母も好きだった。父だって好きだった。圭だって好きだった。」
でも、と彼女は続けた。
「…父を憎んだこともあった。もし、父と母が離婚しなければ。
圭と離れることもなく笑いあって暮らせていたんじゃないか、って。
母を無くすこともなく、普通に暮らせたんじゃないかって。」
…その気持ちも分かる。
もし再婚しなければ。
新しい母と出会う事もなく。
失う苦しみも味わわずに済む。
彼女はずっと虐げられてきた。
「圭に会った。数年ぶりに会った圭は感情を失っていた。
…圭も辛い目にあってるのは知らなかった。」
…分かった。
「…分かったぞ。お前は…」
秋月が。
どうして圭を避けたのか。
「お前は…圭を守りたかったんだ。」
心に傷を負った圭に。
これ以上傷を負わせたくなくて…
でもまた来たという事は…
「…父が死んだのか?」
コクリっと笑った。
穏やかな笑顔だった。
「圭を憎んでいたのも事実だよ。圭は愛されていたから。」
…愛されていた?
そのようなことを言っているのだろう。
「…どうして2人は別れたのだろう。」
確かに今まで一番の疑問だ。
「…知りたいか?」
えっ、と小さな声が漏れる。
頬杖を付いて少し身を乗り出す。
挑むように。
「私ならそれを調べられる。」
間が大事だ。
絶妙なタイミングで。
切り出す。
「代わりに圭に話して欲しい。圭は今もそのことに苦しんでいる。
…あなたから、話して欲しい。」
「どうして…?」
くすりっと笑う。
不敵に。
圭が救ってくれた時の様に。
「放っておけないんだよ。圭のこともそうだけどさ…」
ニヤリっと笑った。
「あなたと私は似ているんだよ、香さん。」