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Re: 秘密 ( No.395 )
日時: 2014/08/13 13:04
名前: 雪 (ID: WDXckvnh)

その後、母は息を引き取った。

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近くの椅子に座り医者たちと話している圭達を待っていた。

人の死、と言うものに初めて直面した。

あの時、圭は前髪に隠して泣いていた様に見えた。

なんだかそう遠くない未来の私を見ているような気分だった。

もう少し早く見つけられれば。

2人はもっと言葉を交わせただろう。

もう少し早く調べれば。

もっと早く会わせることも出来ただろう。

私がちゃんとケイに向き合っていたら。

圭の闇に気付いていれば。

圭のことを見ていれば。

彼らには描けなかった幸せな未来が描けたんじゃないか。

「…連れてきてくれて、ありがとね。」

香さん…

見上げると泣いた後のせいか目元が赤い。

違う。

私は感謝される様なことはしていない。

「帰ろっか、アリス」

「…違う」

恨みごとの様に口から言葉が溢れだす。

「私がもっと早く調べていれば!もっと圭と向き合っていたら!
圭のことを見て、気付いていたら!!きっともっと会えて、きっともっと言葉を交わせた!!」

3人で仲良く暮らす。

そんな未来だってあったのかもしれない。

「良いんだ…最後に会えただけで。それだけで満足だ。」

「でもっ…!」

「良いんだよ。これは僕ら2人の罪だ。親と向き合う事を忘れた馬鹿な姉弟の罪だ。」

圭は笑っていた。

静かに。

泣いている子どもをあやすように。

「自分の罪からは逃げたくない。アリスが背負わなきゃいけない罪なんてどこにもない。」

チュッ

小さな音とともに反論しようとした口が塞がる。

「目は覚めた?」

「っ———!」

顔が熱い。

涙すらも驚いて引っ込んでしまった。

「確か全部終わったら映画に行くんだったよね?」

圭はキスになれるのが早すぎだ。

こっちはキス1つで夜も眠れなくなるというのに。

「今度の日曜日、一緒に映画に行こう。」

跪いた圭の手をとる。

体温が上昇した顔で小さく微笑む。

「喜んで。」