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Re: 秘密 ( No.429 )
日時: 2014/12/03 14:00
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

「元々結婚は反対されていたんだ。」

楽しそうに笑った。

どこか冷たい笑顔を。

顔に張り付かせていた。

「連続殺人犯の娘だなんて。誰だって自分の息子にそんな女との結婚を認めたくないでしょう。」

意味は。

少し。

理解できる。

でも。

酷い話だと思った。

その程度のことで。

余生を踏みつぶされたのだ。

「その呪いの言葉を口にして。あの人は私を捨てたよ。」

呪いの言葉。

自らの父の死を願う言葉。

その言葉に。

彼は詩織さんを捨てたのだ。

おぞましい。

恐ろしい。

そんな言葉を残して。

そんなことを。

笑いながら話した。

「それでも。その言葉を後悔はしたけれど。そう確かに思ったんだよ。
顔もろくに覚えていない父親のせいで。色んな物が犠牲になった。親しい友達もいなかった。
母だって死んでしまったし、恋人だって彼が初めてで…最後だった。」

頼れる相手などいなかった。

世間は何時だって冷たい。

「身ごもった凛ちゃんを産んで。でも私にはまだ現実を直視できる状態じゃなかった。
あの人に捨てられてから、凛ちゃんを身籠ったまま。生活費を稼ぐのが精一杯だった。」

おかしいとは思っていた。

凛に関しては暴力の気はあった。

けどそれよりも強いのは。

無視だ。

「凛ちゃんはあの人によく似ている。向き合うのが怖かったのかな。
今思えば、愚かしいことだったけれど。ああしたことで、確かに凛ちゃんを傷つけたのだから。」

笑みを浮かべている。

けれど。

暗くて。

底が見えない穴を覗き込んでいるような。

そんな錯覚がする。

そんな。

何と表現すればいいか分からない顔をしていた。

「守ることなんてできなかった。傷つけることばっかりだった。」