コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.437 )
- 日時: 2014/12/13 20:19
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
延々と泣いたあと。
ふいに涙をぬぐった。
目の前には。
真っ赤に目を腫れさせた。
あの人そっくりの顔。
ううん。
あの人じゃない。
私の息子。
白雪凛だ。
「もう行くよ。」
見上げるほど。
大きくなったね。
「お母さん、遠い町に行くんだ。凛ちゃんと一緒に暮らそうと、静かな町にしたんだ。
静かでなじみのある町に。…でもまさか、涼風に戻ってきていたとは思わなかった。」
「母さん、俺…」
すっと凛の頬に手を添える。
静かに言葉を断じる。
「無理に答えなくていいよ。」
気持ちの整理なんて。
直ぐにはつかないだろう。
「ここにいたいなら、いるといい。母さん、頑張るから。」
これから先も。
ずっと。
凛ちゃんがいれば。
それだけで。
私の力になる。
「凛ちゃんは今を。精一杯生きて。」
失った時間は。
二度と戻らない。
それを私は何よりも痛感している。
「私には手に入れられなかったもの。味わえなかったもの。沢山感じて。大事にしてあげて。」
それは友であったり。
部活動であったり。
恋であったり。
考えて。
迷って。
色んな道を模索して。
大事なものを見つけて。
守って。
「やりたいことをちゃんと見つけて。私はそれを遠くから見守ってる。」
もっとも。
「大事なものは見つけたみたいだけれど。」
くすりっ、と小さく笑う。
先程からずっと傍らで。
凛に寄り添う様に立っていた。
「ありがとうね、万里花ちゃん。凛の傍にいてくれて。手、ごめんね。」
流石に少しやりすぎたと思う。
今だ痛々しく絆創膏が貼られていた。
「構いません。凛を想ってのことでしょう。」
…やっぱり
万里花ちゃんは気付いていたか。
凛がきちんと私を憎めるように。
わざと傷つけたことに。
「憎くはない?」
「いいえ。」
即答。
質問を発し終わると同時。
迷いがない。
「だって、詩織さんがなにより傷付いているでしょう?」
「っ———!」
…やっぱり
凛ちゃんが選んだだけある。
——ちゃんと大事にしなよ、凛ちゃん
「じゃあね、万里花ちゃん。また会おう。」
電車に乗り込む。
ガランガランの車両。
発車のベルが鳴り響いている。
「凛ちゃん、遠くにいてもずっと想っているから。忘れないで。」
そういって電車に飛び乗る。
くるりっ、と凛の方を向くと。
愛しい気持ちがこみ上げた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
扉が閉まる。
その一瞬手前。
凛の顔が。
笑みが。
少しだけ寂しそうにゆがんだ。
「————」
閉まった扉にコツンっと額を付け。
愛おしそうに笑いながら。
何かを呟いた。
ハッキリとは聞き取れなかった。
でも。
大事な言葉。
なにを言ったか。
分かった気がした。
—————愛してる