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Re: 秘密 ( No.503 )
日時: 2015/06/12 17:58
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

授業が終わり、屋上に行く。

少女は既に弁当箱を開け、ゆっくりと箸を進めていた。

「こんにちは、三田村先輩」

こうして見ると、本当に綺麗な顔だ。

どこかの絵画から抜け出してきた様だ。

化粧を施している様子もない。

所謂「すっぴん美人」と言う奴だろうか。

それなのに、絹糸の様な滑らかな肌をしている。

「こんにちは、アリスちゃん」

「有栖川幽」

箸を止め、こちらを見てにっこりとほほ笑む。

大人しく、それでいて鋭利な刃の様な雰囲気を持ち合わせている。

今の彼女は、さながら鷹とでも例えるのだろうか。

「これを聞いて、直ぐに分かりましたよね?」

————私の正体

彼女はそう告げた。

分かっている。

「有栖川幽。有栖川は名のもじり。幽はゴースト。」

様々な表情や雰囲気を使い分け、本名すら誰も知らない。

彼女の本質を、誰も知らない。

父はいろんな国にいって、捨て子や何かしら事情のある子を拾ってくる。

そして、それを自らの武器にする。

そう言った建前で、養っているのだ。

「あなたの通り名、だろ?」

その仕事ぶりは手際よく、存在を隠し通している。

それを称して、ゴースト。

「今度の仕事は、私の見張りか?」

彼女、有栖川幽。

「アリス=エイベル」

彼女の本質は、誰も知らない。

だからこそ、恐ろしい。

彼女の口がにやりと不気味にゆがんだ。