コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.519 )
- 日時: 2015/05/04 15:51
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
「圭先輩。」
教室に訪れたのは昼休みが始まってすぐだった。
「…幽」
何をそんなに疲れ切った顔をしているんだか。
いなくなってたったの1日じゃないか。
苛々する。
「朝は失礼なことを言ってすいません。
少し、お話をしたいのですが…何時も通り屋上でお食事をしましょう。」
何時も、彼らが屋上で食事をしていることを知っている。
何度かその食事の席に、呼ばれたこともある。
だから、知っていてもおかしくはない。
屋上に呼び寄せたはいいものだが、どうやって切り出そう。
まっ、本題から行くのが一番良さそうだ。
「…心配しないでください。アリス先輩は無事ですよ。
ただ、少し悪性の風邪を引いてしまった様で病院に向かうようです。」
「…そっか」
どこか変化がない。
安心したようでも、疑っている訳でもなさそうだ。
「朝のことは本当に申し訳なく思っているのです。」
「…気にしなくていいよ。図星かな、って思ったし。」
私は表情を作ることを得意としている。
本物のアリスは大抵のことには優れているが、人間味に欠ける。
運動も出来ず、自ら得た知識を。
エリスに授けている。
アリスの知識はあくまで知識どまりだ。
いくら頭が切れて、応用性があっても。
例えピッキングの知識があっても。
それをエリスにやらせている。
私は実地でも知識でも得ている。
そこは、本物のアリスには無い。
「…聞きたいことがあるんだ。」
アリスは得た知識を人に授け、間接的に殺めた。
エリスはその知識で人を殺めた。
私は自ら知識を得、そして自ら磨いた技術で殺めた。
私はアリスとエリスを重ね合わせた様な。
エリスを体力や力があり。
アリスは知識がある。
私は体力も力も知識も、人間味だってある。
オールマイティ、というのだろうか。
「…なんでしょう?」
私は彼女より優れている。
なのに、何故彼女ばかりが優遇されている。
私は代理品だ。
それでも構わない。
そう言った覚悟で、テオドールの下についた。
ただ、腑に落ちない。
「…俺の、なにがおかしかった?」
そう言う話か。
「変だな、とは思っていたんだ。でも具体的には分からないんだ。」
どう答えるべきかな。
素直に答えるべきか、はぐらかすか。
「圭先輩とアリス先輩はお付き合いをされていたそうですね。」
風の噂で聞きました、と小さく微笑む。
「今の圭先輩の方が、私は好きですよ。人間らしいです。」
何かこう思い悩んでいる様な顔の方が、人間らしい。
こいつの生い立ちは知っている。
「アリス先輩の考えが分かるというほど、私は自惚れてはいません。」
卵焼きが甘い。
味付けに失敗しただろうか。
「ですから、あくまで私の見解です。そこのところをお忘れなく。」
少し大人びた喋り方に過ぎたな。
高校生って言うのは難しいな。
学校と言ったものには、何度か潜入したことがある。
同世代と話をするのは確かに初めてな気がする。
キャラクターがつかめない。
「そうですね…圭先輩は優し過ぎます」