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Re: 秘密 ( No.527 )
日時: 2015/07/09 18:01
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

ぴかぴか光る携帯を押すと、自動的に留守電が再生される。

「…もしもし」

少し控え目な圭の声。

分かっていた。

圭がかけてきていたことくらい。

「アリスの言っていたこと、ちょっとだけ分かったような気がしたよ」

私の言っていたこと。

と言うことは、手紙は彼の手に渡ったのか。

もう1人のアリスは、ちゃんと仕事をしてくれたのか。

置き手紙、なんてもの初めてだった。

彼になにかのメッセージを残したのも。

「…無理をしていたのかもしれない。でも、アリスに近付けたなら。
もしそうなら、すっごく嬉しい。アリスにずっと憧れていたから。」

嬉しそうな声。

ちがう。

違うよ。

私は圭が憧れるような人間じゃない。

圭は何も分かってない。

私が言いたいのは、そう言うことじゃない。

「人間だよ、ちゃんと。アリスだって。」

…私が人間

今、圭自身が人間離れしているって言うのに。

よく言えたものだ。

「人間にさせてみせる。」

ピーと電子音が鳴った。

「消去する場合は…」

圭の声を伝えるだけ伝えると、役目を終えたかのように。

決まり切った文章を読み上げ始めた。

「…人間、ね」

指で携帯をはじくと、再びパソコンに向き直った。

もう、ちらりとも携帯の方を見なかった。