コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.535 )
- 日時: 2015/08/17 18:52
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
思い出の屋敷で圭に話したことを思い出した。
エリスは立派な兵士として育ち、手練手管の手段を用いてお金を集めた。
今では孤児院を建てられるくらいに。
エリスはよく孤児院を出入りし、子どもたちの世話をしているらしい。
孤児はある一定の年齢に達すると、兵士になるための訓練を施される。
決まった道を歩くことになるが、生きていられるだけでもこの国では儲けものだ。
エリスが歩いてきた道は、決して楽な道ではなかっただろう。
エリスは知らない。
孤児達を兵士にするのは、そうすることでしか生かせないからであることに。
私も。
なにも、知らない。
知らずに、ずっと憎み続けていた。
全て父がやっていたのだ。
父が国王になってからは、都は栄え人は増え、孤児も増えた。
孤児たちを1人でも生かすために兵士にして。
そしてその兵士たちを使って金を集めた。
もう二度と、飢えて死んでしまう孤児が出ない様に。
私にとって父は絶対だった。
成長するにつれ、私は自分の生い立ちの歪さに気付いた。
父が悪の権化の様に。
そんな風に思い始めた。
父は母を虐げ続けた。
私のことも、軽んじ続けた。
エリスの兄弟達も人質にされている。
嫡男だというのに、放っておかれたアレクシス。
トールだって、父に出逢わなければ生まれながらの体を弄ることもなかっただろう。
だって。
だって。
…でも、私は父の何も見てはいなかった。
何もかも捨て、家族も、仲間も、自らの身さえも切り捨てた。
さっきまで、半信半疑だったけれど。
私の質問に、迷いもなく民と答えた。
それで、やっと分かった。
ああ、これはきっと本当なんだと。
私は一体なにを見てきたのだろう。
私は一体なにをこの目に写してきただろう。
どうして、気付けなかったんだろう。
チャンスは、いくらでもあったというのに。
今度こそ、父の本質を。
私は見れているだろうか————?