コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.539 )
- 日時: 2015/09/13 23:24
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
「マリー!?リン!?」
圭の後ろについて来た、2人の姿に目を疑った。
圭だけなら分か…らなくもないが、2人を連れて来られたのは初めてだ。
控え目どころかズカズカと、と言うほど遠慮がなく歩いていた。
「アリス!」
渦を巻くように伸びている階段を、まず先にマリーが駈け上る。
今私がいる所は高さ的には2階。
直ぐ追いついて、首に腕を伸ばししがみついてきた。
「心配、しました…!圭から話を聞いて…勝手にいなくならないで下さい…!」
声が泣きじゃくっているみたいに、震えている。
いつもいつも、心配ばかりさせていた。
自覚はあった。
でも、仕方ないことだと思っていた。
私はここから離れられないし、今回は留まるつもりで来た。
「…ごめんね、マリー」
何時も相談に乗ってくれて、背中をバンバン叩いてくれる。
真っすぐで、一途なマリー。
1人の人をずっと好き続ける。
10年もの間。
好きな人が、別の女の子を見ていても。
それを笑顔で隠し、想い続けた。
そんな強かな女の子。
大好きだった。
「ここでやらなきゃいけないことを見つけちゃったの。
私にしかできない。…ううん、私がやらなきゃいけない仕事。」
マリーの細い腰に手をまわして、抱きしめ返す。
どんなときだって、こうやって無条件に抱きしめて。
涙をこぼしては心配してくれる。
そんなマリーを強くて、人間みたいだと思った。
いつも羨ましいと思っていた。
ずっと、尊敬していた。
「…アリス?」
「こうやって抱きしめられたりすると…迷ってしまうから。」
腰にまわしていた手を緩ませる。
マリーはリンと付き合ってからは、本当に幸せそう。
大人びた…というのだろうか。
もともとの容姿もあるけれど、なんというか雰囲気が変わった。
リンも。
更に強く、たくましく、大人っぽくなった。
相手を想い、想われることを受け止めて。
どこか人としても成長をしてるみたいだった。
「ようこそ、マリー」
いつからか後ろにいたリンに向き合う。
「久しぶりだね、リン」
「…唐突過ぎるんだよ」
リンの背中に手を回す。
クリスマスに私をおんぶした時よりも、背中が大きく感じた。
皆、変わっているんだ。
本当に自分を必要としてくれる存在を胸に抱いて。
そうやって強くなっている。
リンを見て、私も強くなりたいと思えた。
2人みたいな恋をしたいと、心の底から思えた。
「ごめんごめん、今度からは少し気を付けてみるよ。」
リンから離れた後、圭と向き合う。
圭の頬がこけていて、少し痩せていたようだった。
…想像には、固くない
「手紙、読んでくれた?」
幽に伝えておいてと頼んだ手紙。
誰かに当てて手紙を書くなんて初めてだったけれど。
「読んだよ。」
幽は…ちゃんと渡してくれたんだね。
なにを考えているか分かりづらくて、苦労している。
完全記憶能力と…それ以外の特異点。
私の代用品。
私の真似ばっかりだ。
そして私も、きっとそれを強制した。
「…そっか」
それだけを言うと、圭の背中に手をまわした。
弱弱しく、やっぱり痩せたなと実感した。
「人間であることを、誇って。」
圭と離れる時、にっこりとほほ笑んだ。
圭も微笑み返してくれた。
そうして、3人と向き合って私はまずこう告げた。
こう告げるべきだと、分かっていた。
「ようこそ、アニエスへ。」