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Re: 秘密 ( No.547 )
日時: 2015/10/24 19:31
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

どうして怒鳴ってしまったのだろう。

いつもなら、笑ってかわす所だったのに。

彼女と…アリスといると…彼らを見ると…あいつ等を思い出す。

私がこちらの世界に関わってからできた、初めての友人達。

気さくで、話しやすく、良く笑っていた。

喧嘩もしたし、その分仲直りもした。

自分と彼らが違うことは、気付いていた。

出逢った時は、距離を置く様に作り笑いを浮かべた。

けれど、いつの間にか親友と呼べるほどの仲になった。

出逢ったばかりの時には思いもつかないほど、親しくなった。

その頃には夜会なんかにもちょこちょこ顔を出していた。

沢山の人の、沢山の表情を知っていた。

嘘を突こうが、騙そうが、大抵は表情を見ていれば分かった。

だから、心から一緒にいることで楽しめる相手などいなかった。

人の気持ちが分かることは、安心感と同時に嫌悪感を呼び寄せた。

それが当然のことだと思っていた。

けれど、彼らは本当に何の偽りもない様な笑顔を向けてきた。

遊んだことのないことや、聞いたこともない様な場所へ連れて来てくれた。

ずっと大人たちの中で生きてきた。

金持ちの習性や、癖は分かっていても。

同年代の子との関わりはなかった。

それはきっと、私が他の子と違うことに羨望を覚えることを控えるためだろう。

けど、その頃は羨望ではなく疎外感を覚えていた。

疎外感、とも少し違うかもしれない。

ともかく、自分が他人と違うということはよく分かっていた。

だからこそ、実感できるのだ。

私が出逢ったのが彼らで良かった、と。

能天気で、好奇心旺盛で、いつもどこかちょこまかしてて、人をからかってばかり。

なのにさりげなく気遣い屋で、自由で、優しかった。

彼らといた時に感じた想いを、私はもう感じない。

彼らを言い表す言葉は、1つでは収まらない。

でも、唯一言えるのは。

彼らは死ぬべきじゃなかった。

死ぬはずじゃなかった。

「…なんで、死んじゃったかな」

聞こえるはずがないのに、ボソリと呟いた。

彼らがいなくなってから、ずっと薄れることのない痛みが身体中をめぐっている。

でも…

アリスが彼らを見つけた時。

彼らに会った時。

彼らと話している時。

稀に。

ごく稀に。

彼らと話しているかのような感覚に襲われた。

だからこそ。

今度こそ。

間違えてほしくはないのだ。

同じ道を辿ろうとしている彼らを。

そして、私の対となるパートナーのアリスを。

好意を抱いたことがある。

けれど、嫌悪感だって何度も抱いてきた。

まるで人形の様に、自己主張がない子だったから。

自己犠牲だけで、全てを解決しようとするから。

自分を写した鏡を覗き込んだみたいだった。

とても似ているのに。

左右が逆転しているみたいに、相容れない。

けど、やっぱり根本は一緒。

アリスは、私と同じ道を歩こうとしている。

守ろうと、大事にし過ぎている。

「私はあんたに…同じ道を歩いてほしくないんだよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「見苦しいところを見せちゃったね。」

3人に向き合う。

「…大丈夫ですか?」

「なにがあった?」

こう言う時、躊躇わずに声をかけてくれる彼らが好きだ。

リンやマリーらしい強みだ。

本当なら真っ先に声をかけてくれる圭は、口をつぐんでいる。

私が外出前に行ったことを気にしているのだろう。

「怪我…してない?」

ようやく躊躇いがちに訪ねてきた。

「大丈夫だよ。ありがとね。」

さっき怒鳴った時に落ちた花を拾う。

あれだけ落ちない様に気を付けていたのに。

結局は全部落としてしまった。

失態だ。

花を拾うと、今度こそ落とさない様に抱え込んだ。

台所で煮詰めておかないと。

「…初めての、喧嘩だ」

エリスが私に対して大声を張ったのも。

それに対して私が怒鳴り返したのも。

思えば、マリー達とも喧嘩なんてしたことなかった。

それは、私の本質を彼らに隠しているから…?

幼い頃から、私の全てを見てきた。

生い立ちも、私の性格も、よく知っている。

万里花達には、結局私は何時も隠し事ばかりしている。

「ちょっと、台所に行ってくる。」

どうして…

どうして、怒鳴ってしまったのだろう。

知らず知らずのうちに、2人は同じことを想っていた。

無意識のうちに。

結局は、似た者同士。