コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.563 )
- 日時: 2016/05/08 17:15
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
やがて私は好意を寄せる様になった。
彼らのことを愛しく想う様になった。
彼らのことを、とても大切に想う様になった。
今からすると、まるでアリスと同じような道を歩いていた。
圭がルーク。
凛がアイザック。
万里花がミーナとするならば。
私はアリスと1つだけ違う所が合った。
私が好きになったのは、圭では無く凛だったのだ。
物静かで、知らない人とはハキハキと喋ることなんてできない。
でも、さりげない優しさ。
少し不器用なところも、大好きになっていた。
綺麗な顔立ちで、何にもとらわれない様にどこか自由で。
黒い髪も相まって、猫みたい。
どうしようもなく、惹かれて恋をしていた。
私には仕事用の携帯しか持たされていなかったし、城で手紙のやりとりをする訳にも行かなかった。
だから、彼らとは廃屋のポストに手紙をいれてやりとりをしていた。
この頃のアニエスは今よりまだ少し領土が広くて、夜会の会場もアニエスの領土だった。
今みたいに周りが崖で囲われるような狭い所にアニエスの領地を定めたのは。
他国からの侵入を阻むため、テオドールが狭めたもの。
彼らがいなくなってから、私は孤児を養う施設を作る為に。
尽力し続けた。
話を戻そう。
私は偶に寝る前や訓練の休憩時間に会いに行きたかった。
リスクが高いことも分かっていた。
だから、いつも寝る前に彼らの顔を思い浮かべて必死に眠りについた。
会えない時間が長引くほど、恋しさは増していった。
異性を好きになるなんて、初めてだった。
好きになればなるほど、私は自分のことを隠した。
嘘をつくのも次第に苦しくなった。
いっそ、今の立場のなにもかも無くなってしまえばいいのに。
アニエスと言う存在全てが消えてしまえばいいのに。
そう、思いもした。
でも、辛うじて今の私を作っているのはアニエスの環境だ。
作り笑いも、衣食住も、兄弟も。
全てアニエスにいたから得られたものだ。
私が今生きていけるのは、全てテオドールに与えられた技術。
トールが咲かせてくれた才能だ。
アニエスを失った場合、私には何も残らない。
お金もないし、生きていくすべもない。
テオドールはきっとその辺りも心得ていたのだろう。
彼らなら、きっと話したら受け入れてくれる。
そんなこと分かっている。
でも、以前と同じようには接してはくれない。
些細な言動の端々から、彼らの気遣いや優しさを感じ取ってしまう。
テオドールが伸ばした私の才能。
人の気持ちが分かってしまうことは、残酷なことだ。
偽ることすら、出来ない。
感じたくないこと、気付きたくないこと。
全てを一身に浴びてしまう。
だから、知られたくない。
嘘をついて、重ねて、暴かれないか怯えながら。
彼に恋をしていた。