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Re: 秘密 ( No.571 )
日時: 2016/01/26 21:54
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

「はい、そこまで」

突然割り込んできた聞き慣れた声に。

私の顔から瞬時に熱が消え去った様な錯覚を起こす。

声のした方角には、金色の長い髪。

黒い服と金色のコントラストがよく映える少女の様な顔立ち。

「…トー、ル」

トールは何の遠慮も無しにズカズカと近づいてきた。

「お楽しみを邪魔してごめんね。色々許容してきたけど…もうこれ以上はダメってさ。」

トールの視線が、私の隣のアイザックに向けられる。

「やめてっ!!」

知られた

知られたっ!

絶対に気付かれない様に、ずっと細心の注意を払っていたのに。

大事だからこそ、恋しい夜も枕を抱えて耐えたのにっ!

一緒に歌ったり、踊ったり、花を贈り合ったこの日が。

途絶えてしまう。

「なんでも言うことを聞く!だから、手を出さないで!!傷つけないで!!」

彼らの傍には、もういられない。

でも、それよりもずっと。

彼らに危害を加えられる方がずっとずっと怖い。

「何言ってんの?」

冗談を言うみたいに。

何時ものように無邪気に笑って。

大袈裟に肩をすくめた。

「傷つけたり、傷つけられるのは当たり前だろ?」

それからは、地獄だった。

パチンッと鳴らしたトールの指。

訝しげにアイリス、と問いかけるアイザックの声。

取り押さえる大柄な男たち。

私の悲鳴。

遠いところで聞こえた、ミーナの声。

ルークの怒声。

頬をボロボロと伝う、涙。

彼らに向かって痛いくらい伸ばした、私の手。

そして、遠くに小さく見えるテオドールの姿。

それが、あの時私が見た全て。