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Re: 秘密 ( No.587 )
日時: 2016/04/24 23:44
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

「遠出で疲れたよね。明日は橋の向こうまで行くから、ゆっくり休んでね。」

にこり、と笑った。

気付けば、もう夜も遅い。

かなりの時間がたっていたらしい。

「そそ、ゆっくり休め。若人よ。」

エリスは、また作った様な笑い方をしている。

エリスにとって、アイザック達だけが絶対なのだろう。

優しくて、温かくて、儚かった彼ら。

笑い合ったあの日が、永遠なのかもしれない。

それはもしかすると、一生揺らぐことがないかもしれない。

狭い世界。

でも、それがエリスの全て。

決して帰って来ない、過去に囚われている。

それが悪い、なんて私には断じられない。

彼らがいた日々は、それだけ素晴らしいものだったのだ。

それ以外の全てが、どうでもいいと思えるくらいに。

そんなことを彼らは望んでいない。

そんな月並みの言葉を、掛けることはきっと彼らに対する侮辱だ。

彼らはもう何も語らない。

彼らの意思を知るすべは、もう存在していない。

それを代弁することは、きっと誰であろうと彼らへの冒涜になる。

彼らはエリスの中に、ずっと存在し続ける。

もう、いなくても。

心には彼らと紡いだ物語がある。

だから、願う。

いつかエリスに、アイザックと同じくらいに大事に想える人が出来ることを。

アイザックを忘れる訳じゃない。

彼らのことを知って、それを受け入れてくれる人を。

それでもエリスを想っていてくれる人を。

人生って言うのは、長いんだ。

今日とは違う明日が、必ずやってくる。

苦しくても、辛くても。

生きていれば、必ず変化は訪れる。

だから今の私に。

エリスに掛けられる言葉は、ない。

「エリス、生きろよ。」

エリスが、いつか本当に笑えたら。

無理矢理でも、作ったものでもない。

本当の笑顔を。

「…死ぬわけには、いかないじゃん」

私はただ。

それを、願うだけ。

エリスがアイザックから貰ったアイリスの花に込められた意味を。

守ってくれることを、祈るだけ。