コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.639 )
- 日時: 2016/12/11 11:55
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
酷いことを言った。
きっとじゃない。
絶対、圭のことたくさん傷つけた。
食事の席に出ていないと、エリスが毎日の様にこぼしていた。
部屋に引きこもり、部屋を出入りするマリーやリンの疲れた姿しか目に出来ないらしい。
それだけで大体現状がどうなっているか、分かる。
マリーやリンの手にする食事は、いつも殆んど口が付けられていない。
それでエリスはかなりご立腹だ。
足りない訳ではないが食事は節制したいと、勿体ないと愚痴ていた。
お金はエリスやアレクシスの稼ぎがあるから、困りはしない。
けれど大国と付き合うために、お金はかかる。
だから貧民層も存在するのだ。
電話してから数日、殆んど食事を口にしていない。
私は慣れていても、圭は違う。
きっとやつれている。
最低だ。
確かに圭に言ったことは少なからず真実だ。
圭が見ている私はあまりにも神々しくて、天使みたい子だった。
私はそんな理想と違うことが苦しかったし、作り笑いだって何度もした。
でも、圭の傍が唯一の安らぎであるのも事実なんだ。
その安らぎを失いたくなくて勝手に無茶して、から回ったのは私なんだ。
圭が私の本心に気付かなかったのは。
なにより私がそれを望んだからだ。
だから圭はなにも悪くない。
なのに。
圭は私に文句の1つも言わない。
どうして。
どうして圭はそんなに優しいのだろうか。
圭の優しさは憎らしいけど、私を救ってくれもした。
憎いけど、それが愛しくもある。
まるで母が父に向ける気持ちみたいだ。
でも私は母とは違う。
母は父の意志を尊重し、父の死に際まで彼の陰に徹していた。
父の傍にい、父を想い続け、父を見返すために生きてきた。
父の中に、少しでも存在し続けようとした。
それが母の意志で、母が決めたことだ。
私は圭を追いかけてアニエスから逃げ出しもしなければ。
圭が私を追いかけて闇に沈むのも嫌だ。
互いに、好きなように生きればいい。
圭が例え私を想っていなくても。
私が圭を想えていればいい。
圭の中に私がいなくても、私の中には圭がいる。
それで充分。
それが私の意志。
私は圭を追いかけない。
そうすればいつか、絶対に後悔する。
元気に生きていれば、それで良い。
私ばかりにしがみついて、生きていて欲しくない。
私も、これからどういう顔で圭の傍にいればいいか分からない。
圭が帰国するまでの数日。
私は圭の部屋には近づかなかった。