コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 秘密 ( No.651 )
- 日時: 2017/04/05 13:26
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
「私はここで、アニエスを助けるよ。」
「僕は涼風に戻って、夢を見つける所から始めるよ。」
お互いの小指を絡ませ、微笑みあう。
少し距離を置こう。
お互いのことだけでなく、周りもちゃんと見えるように。
もう理想で誰かを傷つけないように。
「もし、恋人になれなくても良い友人くらいにはあり続けたい。」
好きになれてよかった。
こんなこと、聞いてくれるのは圭だけだったと思うから。
「そうだね。傍にはいたい。」
こうやって微笑み返してくれるのは、圭だけだと思うから。
「今度会った時は、お互いが見てきた色んな話をしよう。」
「きっと、楽しいだろうなぁ。」
くすくすと笑い合う。
今までは笑いあっていても、心地よさの中にチクチクとした痛みが潜んでいた。
痛みは圭と別れた後に、じわじわと増していって何時も私を苦しめていた。
「私の本心を知った時、どう思った?」
少し、興味がある。
圭のことだから馬鹿正直にショックを受けて、自己嫌悪に陥っていそうだ。
見ただけでも、数日で体重をかなり落としてるみたいだし。
「アリスがいないと、こんなに駄目なんだと思った。
アリスがいない未来を生きている自分を想像できなかった。」
ストレートな言葉に、素直に恥ずかしくなる。
そうだ。
最初から隠さずに話していたら。
誰も傷つかなかったのかもしれない。
でも、今は傷が愛おしい。
言葉の1つ1つがくすぐったくて、自分の中に温かく降り積もっていく感覚がある。
「…なら、これからも頑張れる。」
私の力だけで、圭の大事な人になれた。
結果が最悪なものだったとしても。
私の存在を、確かに刻みつけることが出来た。
「…ちょっと意外だった。
私が望んでやったことだけど、ここまでとは思わなかった。」
「自分でも驚いた。でも、なにもかもがアリスの思惑通りだと思わないでね。
素のアリスだって、少しは見てきたし。自分で意思で、好きだったんだから。」
照れくさそうに、子供みたいに。
頬を掻きながら笑っている圭を見ている。
ちょっとだけ私より高い背丈。
いつも軽く見上げて、すると直ぐに目が合う。
「圭はいつも驚かせてくれる。圭の偉大さを、今になって思い知ったよ。」
救ってくれないことばかりを嘆いていたけど。
人を助けるって言うのは凄く大変なことなんだ。
「偉大でも何でもないよ。ただ、馬鹿だっただけ。」
目が合うと決まって圭は笑ってくれて。
私も自然と笑みが零れる。
「なら、私も圭みたいな馬鹿になりたいよ。」
「貶してる?」
「褒めてはないけど…貶すってほどでもないよ。感心しただけ。」
「結局どっちなんだか…」
未来の約束をした。
それはきっとこれから先、自分たちを縛り、苦しめることもあるだろう。
でも。
この約束があれば。
圭と何時でも繋がっていられる。
頑張れる。
きっと。
幸せになる為の、力になる。