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Re: 銀の星細工師【参照900突破】 ( No.117 )
日時: 2014/04/26 11:51
名前: 妖狐 (ID: aOQVtgWR)

「あの、わたしと星獲得試験のグループを組まない?」
 ティアラは早速ヒューに別れを告げると自分の教室へ戻り、そこでお弁当を食べていたクラスメイトの女の子に声をかけた。
 彼女の星の数は星ひとつだ。元々、試験の規則で自分の一つ下か上の星数の者としかグループが組めないため、星なしのティアラは星ひとつとしか組むことができない。それでも勉強のできる優秀な子だったので、第一候補者として、まず始めに仲間としたいと思った。
「え……わたし?」
 彼女は少し驚いたように声を上げる。その後少し困った顔で手を合わせた。
「ごめんなさい。実はもう組んでしまってて……」
「あ、いいえ、そう言うことなら大丈夫よ。ありがとう」
 一人目の候補者は獲得できなかった。けれどもう組んでしまったのなら仕方がない。
 次へ行こう。
 礼を言いながら、またクラスにいる星ひとつの生徒にティアラは話しかけに行く。
 たくさんの人を誘っていけば、いずれいつかグループを一緒に組める子とも出会えるだろう。
「あの……ちょっといいかな」
 先ほどの彼女と近い位置にいた大柄な少年に、間隔を空けずに声をかける。そこし声に間が開いてしまったのは少年の威圧感に押されてしまったからだろう。
 彼はとにかくデカい。まるでガキ大将のようだ。がっちりした体格に短くそろえられたハリネズミのような頭、そしてこれまた声が大きい。なにかの長に選ぶなら外見的にも大柄な性格的にも彼にぴったりだろう。
 けれども彼も星ひとつだった。その理由は何とも、幼い頃から筋肉体質だったため何事も力でねじ伏せてしまうのだ。繊細な星硝子はすぐにあられもない姿へと変形してしまう。見ている分には土台や大きな部分を作るには適している体格と力なのだが、小さな技術物の細工だとまったくのようだった。
「おう、なんだグレイス」
 彼はすぐに笑顔で答えてくれた。少しだけ緊張がほぐれる。性格はとってもいい人なのだが、外見がちょっと問題なのだ。
「もう試験のグループは組んだ?」
 先ほどの経験を生かし、いきなり誘うのではなく相手の状況を見ることにした。組んでいたのなら誘うのを止めればいいのだ。
「いや、組んではいないが……」
 なにかに悩むように彼は言葉を濁した。けれどティアラの頭は勧誘の方へ動いているため微妙な変化には気づかない。
「それじゃあ、わたしとグループを組まない?」
「……すまん」
 断られてしまった。しかも連続で。
 彼は考えるように言葉を繋いだ。
「友人に誘われているんだがな、まだ正式に決まっていないんだ。だから今は他の者と必ずグループになるという約束はできなくてな」
 すまなそうな顔をする彼にティアラは首を振った。大丈夫という意味を込めて。けれど内心はだんだん不安や焦りが募ってくる。
 グループを組むというのは難しいのかもしれない。一組五人だからティアラを含めてあと残り四人、仲間にしなければならないのだ。仲間が集まらなければ試験にさえ出れない。
 けれどこの調子でいくと仲間が集まる気がしない一方だった。
「仲間になれなくて悪いが、少しでも困ったことがあったら言ってくれ。助けることぐらいはできるからな」
 ティアラの内心を感じたのか彼は気を遣うように、頼もしく笑った。その言葉に少しだけ甘えさせてもらおうか。
「ありがとう。それじゃあ何かあったときは相談してもいいかな」
「おう、任せろ!」
 優しくて力強い笑みにティアラは安心感を覚えた。大丈夫だって背中を押してもらった気分だ。
 暗い未来への想像にふけっている場合ではないんだとティアラは自分に言い聞かせた。
 今だって次々と生徒たちはグループを組んでいるはず。きっとティアラに残された時間は残りわずかだ。急がねばならない。
 ティアラはまず仲間になる一人目を生徒を見つけるために喝を入れなおした。

 何度転んだって、立ち上がればいい。


      *

 先ほどまで海のように青かった空は雨雲に覆い隠され、いまは憂鬱な雰囲気をかもし出す。太陽が雲に遮られたせいか、なんとなく冷気が下がってきて、肌寒く感じた。
 ぽてっとティアラは廊下の壁際に寄り掛かった。
 今、口を開くと聞きたくもない重いため息が出てきてしまいそうだ。
「惨敗だあ……」
 いざ仲間を見つけるべく奮闘したティアラだったがその結果は負け続きだった。
 最初は慎重に星ひとつの生徒であるメンバーの中から選びつつ声をかけて行った。しかし元々、星ひとつは生徒数の二割ほどしかいないので、目星をつけていた生徒はすぐに全敗してしまった。
 その後はもう捨て鉢というか自暴自棄というか、眼があった瞬間、怪しい道具を売りつけてくるようなセールスマンのようにやみくも状態で声をかけていった。
 それでも……、それでも駄目だったのだ。呪われてるんじゃないかというほど答えにyesのいの字さえ見つからない。
 とすれば後はどうすればいいんだろうか。
 もうなす術はすべて尽くしたのだ。
 やれるところまで必死に頑張ったのだ。
 何度も何度も転んだって立ち上がったのだ。
 けれど成果は伴ってこない。努力は報われると言うが、本当にそれは真実なのだろうか。
 努力してもダメだったときは、その後は、どうしたらいい……?

 鼻のがツンとして、目頭が熱を持ったように熱くなった。
 まだ駄目なんだ。
 視界がぼんやりとにじんでくる。ティアラは眼をギュッとつぶった。
 堪えて。さっきの立ち上がろうと踏ん張ってた自分、戻ってきて。まだ負けてなんかいないはずだから。諦めてなんていないんだから。だから、だから……。
(泣かないで……っ)
「——お姉さん、どうしたの。そんな不幸でも呼んできそうな不細工な顔して」
 灰色の正解に光った矢を飛ばすがごとく、まっすぐに言葉が飛んできた。失礼きまわりない生意気な声には聞き覚えがある。
 ヘッドホンを付けた背の低い少年、ジャスパーがこちらを見ていた。