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Re: 魔女のフライパン −失った君と記憶−【更新中】 ( No.60 )
日時: 2013/12/06 14:49
名前: かんな ◆8DJG7S.Zq. (ID: qdhAso1A)

toムリンカ

あれから、30分くらい、この警察署のマスコットとなり、この場の悪魔の乗っ取り事件の解決方法を見つけてくれ。君は光の白魔女だろ。と強くライタに熱弁されてしまったあたし

もう夕暮れだし、警察としても、仕事という部分を尊重してか、あたしたちを離してくれた

事件については、警察がキーチではない と認めたようで、「さらに引き続き、事件の詳しい部分を捜索するのに全力を傾ける。結果はキーチくん、ムリンカちゃんの元に送らせて頂く。すまなかった」

と、結局シュキの一文で絞められた
その後、3人は、一緒に移動し、すぐそばにある 香蘭公園のアイス販売機でアイスを買うコトに決めた

「私 紫陽花アイスにするっ!」
と、いち早くお財布を持って フライパンで空に踊り出るラナに、キーチがフライパンにまたがりながら言った

「紫陽花味なんてあるの?」
と、ラナが意気込んで言った

「知らないのっ?!……キーチくんには キイチゴ味で 十分ですよーだ!」
と フンっとフライパンをくるりと回転させる

「ん?…まて、キーチ、キイチゴ。キイチ、キイチゴ、キーチ キーチゴ!」
あたしが あっと言った

「なるほど。キーチとキイチゴをかけたワケね。キーチ!木苺味が美味しいって」
と嫌味っぽくわざわざ言う

「え!マジで…?って……他には?」

「そうだなあ…さくらんぼ」

「桃とか美味しいよ!」

「パッションフルーツとか!」

「なにそれ!」

「チョコレートdayティアーレとか?」

「なんだよっそれ!」

結局、あたしは 美味ハチミツ味のアイスにし、ラナは ブルーベリー・ラブ・ラズベリー 

キーチは、ジョークも知らずに ひとり名前が地味な 木苺味を食べた


香蘭公園の広場、夕陽が3人の背中を照らした

「…ムリンカ。今、迎えに行くよ」
3人が消えた後、深くボウシをかぶった 少年が、ベンチに足をかけて、ふっとつぶやいた
———
toコトノ

横にはティアレが居る。

そしてティアレは寝ている

が、ユキのお母様は今、言った

「幻術 デスド・モニカ」…と。

でも、今、これは気づいていないフリをしたほうが良いんじゃないかと思った
ひそかに、わたくしは言った

ユキのお母様に聞こえないように。と

「白き深き奏音 美しく響き 輝き 素直に踊れ」
魔力は 『音』

キーキーとした金切声から 美しい音色までの『音』を操る力。
それがわたくしの魔属性
誇らしく思っている

世の中溢れる この音こそが わたくしが操れる力

この世界の音を自由気ままに 操れる——…ことはない

窓の外は夕暮れで染まっていた

『音』を操るものにも ある程度ラインは引かれていて、これ以上はダメ。といった部分には入り込めない
その指定的ラインを守ったその上でわたくしのような 『音』の使い手が居るのだ

という余談はさておき、呪文だ。

幻術デスド・モニカを唱えられた瞬間に 自分の魔属性の呪文を唱えなければ、悪夢に眠らされてしまう

強い魔力の持ち主であれば…その級は格段と初段で有れば  まわりの人まで 自分の魔属性で言った威力が伝わり、悪夢に眠らされることはなくなる。という

(…わたくしは、大丈夫)
その呪文のおかげか否か、悪夢に眠らされそうになったような瞬時はない。
けれど少し疲れを感じた

夕暮れ時なのもあるが、どちらかというと 魔法を使ったからだと思われる。
極度的に使い過ぎると、魔力エネルギー切れを発生させてしまうだけで、少し待てばまた回復できる



それはさておき いま気がかりなのは、ティアレだ。
さきほどのことで 同じく疲れを感じ眠ってしまっているのだ。

これじゃあ わたくしもちろん 初段じゃないから 幻術デスド・モニカにかかったことは間違えなかった

(今なら、間に合う?)
いま、この瞬間に ユキの母親を乗っ取った悪魔が 思うが儘に操作すれば ティアレは 冥界に召喚され、魔界で言う 「行方不明」になってしまう


「白き…」

間に合わなかった。

みるみるうちに、ティアレは眩き黒き輝きをはためく

目は漆黒を放ち いままでに見たことないような冷笑を浮かべる

今、今 今この場で ティアレが 化け物になり果てる。

目をつぶった瞬間、わたくしの目の前には

ティアレは居なかった。

虫の鳴き声が、じいっと わたくしを睨むように そんなように 聴こえてきた。

わたくしが ヒカリソウルを持つような 真っ白な白魔女のムリンカだったら、ユキの母親を乗っ取った悪魔も、倒せたかもしれない。

だけど それは無理だった

今この場に 白魔女ムリンカは居ない

わたくしは、自分の身だけでも守ろうと 外へ出た

東の空が藍色に 漆黒に染まっていく

それを待つ気はなかった

速く、家に帰りたい。そう思った

ティアレを犠牲にしたのは、わたくしで。

わたくしがその分 生きなければ。

ただ現実的にそう思った

明日行けば、学校の人は 居ないんじゃないだろうか・・。

ただ、白魔女ムリンカの近くに 悪魔は寄ってこないだろう


もう しばらくは


行方不明者が冥界に居ることを知っているのは


ただ一人だった


ただ、一人だった


それは・・・・


 それは・・・・
—————
夜になった ただの 平静な住宅街

そこから 飛行乗り場まで走った少年が、さっそうとした格好で フライパンにまたがった


その少年の後ろ姿は、妙に煌びやかで、軽やかだった

星は その少年を包み込むように そして 畳み掛けるように、微笑みかけた