コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 照れくさいのです。 ※実話 ( No.11 )
- 日時: 2013/12/05 22:10
- 名前: Alice (ID: .7kGAeeY)
Episode*two 後編
放課後。私は、委員会で遅くなった咲良を待っていた。
体育館からはバッシュの靴底が擦る音と、バスケットボールの跳ねる音が聞こえていた。
タクはバスケ部のスタメンだったが、興味が沸かなくて一度も見に行ったことが無い。
今日も見に行かないつもり。バスケのルールも知らないし、一生懸命なタクを見たら笑ってしまいそうだから。←
それにしても随分と咲良が遅い。
何処かで道草を貪っているか、天堀に見とれているか...
どちらかと言えば天堀に見とれている可能性のほうが高い。
スマホを取り出し、LINEを起動させる。
『まだ?』と送信すると、何故かすぐ「既読」のマークが付いた。
既読になっているのに、返信は3分経っても来てくれなかった。
すると、後ろで声がした。
咲良がベストを着ながら、息切れして走ってきた。
「ごめっ...、委員会がさ、遅く...なって」
そのような嘘をつくと予想していた。
咲良の嘘は、もう簡単に見透かしていた私。
きっと野球部で活躍中の天堀を見ていたんだろう。
「天堀を見てたんでしょ」
私が超直球に真顔で聞くと、咲良の顔はあっという間に真っ赤に染まった。
「ち、ちぎゃ...違う」
咲良は動揺すると噛む癖があった。
「ついでに拓海君も見てきたよ!!
超格好良かったよ!ほんとほんと、マジで!
フリースロー3回も決めてた!いやぁあれは凄かった」
そして更に咲良は相手へフォローするとき相手を賞賛しまくる癖もあった。
分かりやすくて本当に単純だと思った私は、スマホを適当に弄る。
「咲良の嘘って本当に分かりやすいよねー。
普段マジとか使わないくせに」
すると咲良の身体はギクッとしたように動いた。
「でも、フリースロー3回も決めてたのは本当だよ。
反則になった数だけ決めてんだよ!合計9点も入ってるんだよ!
栞もちょっとは褒めてあげたらどうなの」
咲良は私と同じようにスマホを弄りだして、
数秒か経ったあと、咲良とタクとのメール内容を私に見せた。
タクの返信だけ見ると、ひとつのメールには必ず私の名前が入っていた。
『栞は俺の嫁だよ、うん。』
『俺さぁ、栞が好きすぎてさ、凄いの。』
『黛が将太にベタ惚れなのと同じだよ///』
『今日から藤本蒼クンは僕の強敵となりました。』
うっぷ、吐き気がしてきた。
「も、もー良いよ。見てたら酔ってきた」
「拓海君は一途すぎてやり過ぎだよね。ノロケ聞きすぎて頭爆発しそう」
咲良は苦笑いして言った。
私へのメールだけでも目眩を起こしているのに。
「天堀サンとのメールを見せてください」
私が咲良のスマホを奪おうとすると、咲良はそっぽを向いて素直に渡してくれた。
え?と思い首を傾げて、LINEのトーク画面を見る。
「愛、美桜、れいか、紫苑、真希、櫻井、タク、和ちゃん、etc...
え?無いじゃん」
次々と連なるクラスメイトの名前の中に「天堀」という字はなかった。
「だって...天堀にID聞いてないもん」
咲良のその言葉に私は絶句。
返す言葉もなかった。
...ああ、なるほど。数秒でその理由がわかった。
きっと咲良のことだから、照れくさくて聞けないんでしょう。
照れくさいから天堀に聞かれるまで聞かない、という手を使っているんでしょう。
「嬉しいお知らせがあったのに」
私が咲良に言うと、咲良は口を大きく開けて『教えてビーム』を目から出した。
「嬉しいお知らせ」とは、文化祭のカメラ係が天堀と咲良二人だけ、ということ。
「カメラ係、咲良と天堀二人だけだよ、甘い時間をたんと過ごしてね」
咲良の顔はまた真っ赤に染まって、何も喋らなくなってしまった。
咲良にとっては文化祭が凄く楽しみになったんだろうけど、
私は練習から当日終了まで憂鬱感に襲われているんだよなぁ。
まぁ咲良と天堀の二人きりの場面を盗撮できればそれでいいか。