コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 悪の組織の一員は正義の味方にスカウトされました ( No.21 )
日時: 2013/12/10 20:30
名前: 夕陽 (ID: VfitXk9z)

十話 なずな、あやめに昔の事を話す!

 なずなは昔から裕福な家で育った。旅行をたくさんしたり、その世代の他の子供に比べて豪華な物をもてるぐらいの。
 しかし、なずなが小学3年くらいのときだった。
 ——なずなが今の両親の本当の娘でない事を知ってしまったのは。
 なずなは、その時作文のコンクールに最優秀賞で賞状をもらった。そのことを早く両親に伝えたいと思い、両親の仕事場に寄った。始めは両親が経営している会社に足を運んだがいないようだったので両親が会社のイメージアップのために作った慈善団体“ホワイトクロス”のほうに行ってみよう、と考えた。
 親会社から歩いて5分程度にあるその本部は普通の家くらいの大きさだ。なずなはその場に着くとこっそりと窓から中をのぞき始めた。その中には予想どうり両親がいた。急いでドアから入ろうとしたが、よく見ると二人ともどこか深刻そうな表情をしている。
 その表情をみてなずなは、なんかあったのかな? と思いドアを開けずに耳をすませた。少し待つと父親のほうから
「なずなの本当の母親からなずなを返せ、と言われたんだが、お前の意見を聞きたい」
 と言う言葉が聞こえてきた。始めはその意味が分からなかったが徐々に自分はもしかしたら偽者の娘なのかもしれないということだと思った。そんなショックにさらに畳み掛けるように
「私はいやだわ。だってその人、なずなをすてたんでしょ?」
 私の本当のお母さんは私を捨てた? 私は本当のお母さんに嫌われてたの? だんだんなずなは聞くのが恐ろしくなり逃げ出そうとした。
 こんなの夢だ。
 悪い夢だ。
 あと一歩でこの敷地から出られる、という時なずなはつまずいてしまった。すりむいたひざ小僧から血がにじんでくる。痛いのを耐えようとするかのように唇をかんだ。それでも痛くて、悲しくて、悔しくてその気持ちが形になったかのように冷たい感触が頬を伝った。
 涙だった。
 一度涙が出ると次々にあふれ出してくる。ついには声を上げて泣き始めてしまう。
 その声を両親が聞きつけこちらに向かってくる。
 その姿を涙でぼやけた視界でなずなは見続けた。