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Re: 悪の組織の一員は正義の味方にスカウトされました ( No.33 )
日時: 2013/12/28 18:54
名前: 夕陽 (ID: IuHi0dEW)

二十話 あやめ、最後の決断をする!

 冬休みが終わってからあっという間に春休みになった。
 春休みが終わったら、もう中学三年生、受験生だ。
 しかし、あやめは中学三年生になるという事は別の事実もついてくる。それは

——ついに“ブラックロード”と“ホワイトクロス”どちらに所属するかを決めるのだ。

 それを伝える日は、始業式の日にした。
 あやめの学校は始業式が午前中に行われ、入学式は午後に行われる。
 なので午後に“ホワイトクロス”の所であやめはどちらに所属するかを言うことになっている。
 そして、その始業式は明日に迫っている。

「そういえばあやめ」
 と里奈に呼びかけられてあやめは、はっとした。さっきまで明日の事を考えていたからだ。
「なに?」
「もうあやめ決めた? 明日のこと」
 里奈に言われてあやめは困った。どうするかはもう決まっているが、反対されてしまっては決心が揺らぎそうだから。あやめははぐらかすことにした。
「うーん、まだ決まってないんだ」
 というと里奈は
「なーんだ、でも早く決めないと。明日なんでしょ?」
「うん、そうだね」
 嘘をついたからかすごく居心地が悪い。そのとき、インターホンがなった。あやめは救われたと思いながらドアを開けると、
「こんにちは、あやめ。父上に言われて様子を見に来ました」
 なずなが立っていた。

「おお、なずなじゃんっ。やっぱりボスに言われてきたの?」
「はい、そうなんです。それであやめは決まりましたか?」
 やっぱりその話か、とあやめは思った。あやめが答えようとすると里奈が先に
「実は私もさっきまで訊いていたんだよっ。でもまだ決まってないんだって」
 と言った。なずなは
「本当にそうですか?」
 ときいてきた。やっぱり嘘ってばれたのかなとあやめは心配になった。
「父上はあやめがもうどちらか決めているだろうと言っていました。まあ、勘なのであまり当てにならないかもしれませんが……」
「まあ、ボスの勘はいっつも五分五分だからねっ」
 このあとは、なんとかあやめが話題をずらして追究はさけられた。


 始業式が終わって帰る時、あやめの足取りはひどく重かった。
 それもそのはず、あやめはお昼を食べてから、皆の前でずっと考えていた答えを言うのだから。
 始業式の前のクラス発表の時、そこまでは普通だった。しっかり自分のクラスも、里奈となずなと同じクラスだということも覚えている。
 しかし、始業式の時、急に思い出してしまい何も頭に入ってこなかった。
 里奈に始業式が終わったあと、
「あやめ、大丈夫? 午後の事で悩んでるの?」
 ときかれてしまった。あやめは、大丈夫と返すのが精一杯だった。

 それで今に戻る。
 今はもう、家についてしまった。あと、昼食を食べたらついに発表だ。
 昼食はチャーハンだった。しかしあやめには味がよくわからなかった。
 なんとか全部喉に通して昼食が終わった頃、インターホンがなった。
 どうやらなずなのようだ。もうなずなは車と共に待っている。もう、どっちに転んでもかまわないと開き直り車に乗った。

 ついに、答えを出す日が来た。里奈に正義の味方にならないかと誘われた日からずっと考えてきた答えを。
 もう、皆集まっていた。
 “ホワイトクロス”のなずなのお父さん、お母さん、なずな、里奈、さくら。
 “ブラックロード”のボス、レイ、ライ、ケイ、綾菜。
 そして、一番重要なあやめ。
「じゃあ、あやめさん、あなたの考えた事を、言ってください」
 となずなのお父さんが言った。
「私の考えた末に出た答えは……









 “ブラックロード”も“ホワイトクロス”にも、所属しません」
 周りの人皆驚いているそぶりを見せた。口火を切ったのは里奈だった。
「なんで? 私、あやめと一緒に“ホワイトクロス”にいたいのに……なんで?」
「実は高校に入ったらやりたいことがあるんだ。だからそのためにどっちも捨てる」
 あやめは里奈のほうを見ずに答えた。見たら決心が揺らぎそうだから。今度はさくらが質問してきた。
「高校に入ったらやりたいことってなんですか?」
「それは高校に入るまで、秘密。その代わり高校に合格したら教えるよ」
 今度はさくらのほうをしっかりと見た。約束するから、と目で伝えたかったから。そうすると他の人は特に質問がないみたいなのでボスがまとめに入った。
「俺的には“ブラックロード”に所属したままがよかったが、アヤメが決めたんだからしょうがない今日はここで解散しようか。な、ソウタ」
「そうですね……。でもあやめさん、いつでも“ホワイトクロス”にきてくれていいですからね」
 というと、レイが、
「“ブラックロード”も待ってるからね、あやめ。いつでも戻ってきなさいよ」
 と言ってくれた。
「とりあえず、解散だな」
 というケイの言葉でその場は解散となった。


 家に戻った時、一番最初に里奈が言った言葉は
「あやめ、今までありがとう」
 という感謝の言葉だった。
「どうしたの? 急に」
「もう、あやめ決めたじゃん? だから私もここにいる必要はないわけ。それにお父さんとの件も解消したしね。それに3軒隣だからすぐ会えるし」
 あやめは
「そうだね、それに学校も一緒だし」
 と言った。本当は寂しかった。けれど困らせてはいけないと思い、理解したふりをした。
 そこから引越しの準備をした。っといっても衣服や生活用品しか持っていくものがないのですぐに終わってしまった。しかし、今日ぐらいは泊まっていきなさいと言うお母さんの言葉で里奈は泊まっていく事になった。

 翌日、里奈は引っ越した。家の中がずいぶん寂しく見えたが仕方ない。
 それにしても全部終わったんだなと感じた。
 結局どちらの組織も裏切った形になってしまったがこれでいいんだと言い聞かせた。
 こうしてあやめの一年かかった一大事は幕を閉じた。