コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 沙野晴香、グレたんだって。《第2期スタート&題名変えました》 ( No.22 )
日時: 2013/12/28 08:41
名前: チョコ★ ◆.zuTcWIMPg (ID: as61U3WB)


「何の映画見に行くんだ?」

広場で隆介と合流したところで僕は聞いた。

…あれ?
隆介から答えが返ってこない。
いつもならノリノリでこっちが恥ずかしいくらいなのに。

「どうしたんだ?」

僕が言うと、隆介はこちらも見ずに言った。

「…あれ、晴香ちゃんじゃね?」
「は?大丈夫か、隆介。」

晴香とこんなところで会うはず…ない……のに………
え…………??

「だよな、あれ絶対晴香ちゃんだよな!」

僕の動揺した感じを見て隆介は確信に満ちた声で言った。
「でも…なんか違う…」

僕自身、声が裏返ってるのが分かった。

そう。僕の目の先には………





  グレた晴香。

Re: 沙野晴香、グレたんだって。《第2期スタート&題名変えました》 ( No.23 )
日時: 2013/12/28 08:55
名前: チョコ★ ◆.zuTcWIMPg (ID: as61U3WB)

「何見てんだよっ」
晴香、いや、グレた晴香の横にいた男がにらみながらこっちに来た。

…と言っても僕はこの2年間ですごく身長が伸びた。
クラスで一番大きいくらいだ。

だから、向かってきた男がずんぐりしていたとしても僕はビクリともしない。
いや、逆にムカついてきたほどだ。

「晴香に何したんだよ」

低い声で僕は言った。
「晴香? フッ、あぁコイツの事?って言うかそんな事何でお前に言わなきゃなんねーの」

「…言えよ。」
「あぁ?」

「言えよっていってるんだよっ!!!」

僕の堪忍袋の緒が切れた。

隆介は僕を抑えようとしても無駄だった。
男が僕に殴りかかってきたんだ。

「やめろっ太陽君!!やめろって… 太陽君やめてっ!!」

晴香が飛び出してきた。

やっぱり僕の事覚えてるんだ。
もっと、腹が立ってきた。

が、もうやめなければ。

やっとの思いで争いを止めたところだがまた男がなぐりかかってきた。

「お前もやめろっつってんだろぉっっ!!!」

晴香が男を引き離した。

「あたしの…太陽君に……近づくな…って…」

僕の前で手を広げて晴香は男をにらんだ。

Re: 沙野晴香、グレたんだって。《第2期スタート&題名変えました》 ( No.24 )
日時: 2013/12/28 12:48
名前: チョコ★ ◆.zuTcWIMPg (ID: as61U3WB)

今の晴香はあのころの晴香じゃない。
ふわふわのブロンドだった髪はストレートがかけられている。

いつもおしゃれで可愛いいと評判だったけどここには違う可愛さがある。

おしとやかで可愛いとかじゃなくて、顔が可愛いだけだ。
前までの和む雰囲気もどこかへ消えた。

「ゴメン…マジごめん」

前の晴香は"マジ"とか使わなかった。
まるで何かに取り付かれたようだ。

「映画…」隆介が口を開いた。

「2人で行って来いよ。オレ、今度でいいからさ」

隆介はあんなに楽しみにしていた映画を譲ってくれた。
ここは僕も言葉に甘えることにした。

映画に向かう途中、晴香に聞かれた。

「こんなあたし、嫌いでしょ」

「嫌い…? 何でそう思うんだよ」
「あたしは太陽君とはつりあわないでしょ?こんなグレたの」

「違う…違う!! グレたって晴香だろ?お前は沙野晴香だろ?」
「あたしは…」

そこまで言って晴香は下を向いた。

「どんだけグレたってどんだけ悪くなったって僕は晴香が好きだ。
元の晴香に戻して見せるから。」

「太陽君…それは無理だと思う。あなたはあたしなんかとはダメ。
もっといい子と付き合っていってよ。」

「同じ空って言ったよな…」

どんなに離れてても僕のこと好きって言ったじゃないか。

「同じ空…だけど関係ない人はただの同じ人間ってだけなのよ。」
「関係なくない。」

「太陽君。 私もうすぐ死ぬんだ。」
「え………?」

ワタシモウスグシヌンダ?

ワタシモウスグシヌンダって…

Re: 沙野晴香、グレたんだって。《第2期スタート&題名変えました》 ( No.25 )
日時: 2013/12/28 14:08
名前: チョコ★ ◆.zuTcWIMPg (ID: as61U3WB)


僕は帰りの薄暗い道で考えていた。
頭の中であの言葉をリピートする。

「脳に大きな支障があるんだって。もう手遅れみたいなんだ」
「そんな…明るく言うなよ。」

「だからさ、もう一度木下さんとやり直したら?」
「そんな事いうなよ。 …お前は何なんだよ。」

僕が晴香に怒り狂ったのは初めてだ。

「太陽君の本当の気持ちは何なの?」

「僕は…








  今のお前が大嫌いだ。」

僕は言ってしまった。
こんなこと言うはずなかったのに。

「……良かった、太陽君があたしの事嫌いで」


——嫌いでよかったってどういう意味なんだろう。
そんなに僕のことが嫌いなのか。

それとも……

他にいえないことがあるんだろうか。
ただ、1つだけ言えることがある。

「私、もうすぐ死ぬんだ。」
この言葉だ。

晴香は性格は落ち着いているけど体は丈夫だ。

だから死ぬって言うのは嘘だ。絶対に。