コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 琥珀ノ末裔 ( No.3 )
- 日時: 2014/04/08 16:20
- 名前: 環奈 ◆8DJG7S.Zq. (ID: ysgYTWxo)
第一話 遥か先の予
瑠璃色の着物 袴 水干で一セットの陰陽師の正装
それは、わたしたち紫咲ノ幻影ギルドの正装だ。
だが、元の名が瑠璃ノ樹ギルドだとあったため、正装は瑠璃色の着物であるという。
そんな正装に身を包んだ 紫咲ノ幻影ギルドの三人は ギルドのお屋敷から、すぐそばにある 綺麗な輝那川へと歩き出した。
——わたしたちは、陰陽師!
「今日も身を清めるぞ!」
と、カイが伸びをする。陰陽師の紫咲ノ幻影ギルドの朝。
修行から始まる——…。
「速く行きましょう」
ハルカが、ミコトを見てにっこり笑顔で言った
私たちは 紫咲の幻影ギルドの者…そして陰陽師
でも、本来の陰陽師と違って、私たちには 私たちなりの「自己流」な生き方があり 紫咲ノ幻影ギルドの結束を認めていた
「始め」
『はいっ!』
カイの掛け声に、威勢のいい私とハルカの声
冷たい川の水は、すさまじい音を立てて、流れていく
「泰山府君祭・刀禁呪・浄心呪・浄身呪・浄天地呪!!」
足で川原の大地を踏みしめ、千鳥足様に前進する
「禹歩!」
何もない…あるのは蒼い空と蒼い水と翠の草原…はちみつ色の太陽。
そんな川の殺風景な景色は、寂しさも感じるが、逆に爽快感と言うものがある。
ミコトは、朝の修業が好きだ。
禹歩の本来は 夜、北斗七星に向かい柄杓方を象ってジグザグに歩くものであるが、紫咲の幻影ギルドは このやり方である
魔を祓い地を鎮め福を招くことを狙いとしており、ドーマンの九字と同様であることが確かだという。
「臨兵闘者皆陣列在前!」
ハルカが叫ぶのにならって、私とカイも言う
『臨兵闘者皆陣列在前!!』
これは九字
紫咲ノ幻影ギルドには…
『青龍、白虎、朱雀、玄武、空陳、南寿、北斗、三体、玉女!!!』
これもつきものとして 九字に入る
「清め…終了!!」
ハルカの叫び声が聞こえた後…
全員がほっと、肩をなでおろす。
これは、紫咲ノ幻影ギルドの陰陽師の朝として 毎日やる当たり前の者だ。
「解散!」
と私が言うと、みんなお屋敷に戻る。
——
お屋敷に戻り、朝食を食べ終わると、ごろりと座敷に転がった。
「はあ〜…」
普通の小学生だった頃が懐かしい。ふつう、とは言っても、一流の小学校で、寮で友達と暮らしていたのだけれど。
しかも今も小学生だしね。ミコトはのんびりとしつつあった。
「ミコト様、ハルカ様がおよびです」
部屋に使いが入ってきて、私は、瑠璃色の陰陽師の正装に合う、髪飾りをつけた。
「ありがとう」
お屋敷の外まで出て、屋敷のそばに泊まる 木造の古式ゆかしい馬車に乗り込む
「遅い。行きますよ」
私が 上目使いでハルカを見つつ
「はい、承知しております」
私がうなずいて言う
「じゃあ おねがい」
交通安全の護摩を払い終わったカイも、最後に馬車に乗り込む
瑠璃装束の三人は、馬車で少し遠くまで行く
馬車の中でも 身固めをし、しっかり警戒心を持つ・・・・・・
この中でも、カイは、一番優秀な陰陽師で 聖なる心と正義を持ち、陰陽師らしい、言葉づかいも良い
…わたしの 目標…かも。
でも 憧れ のほうが強くて
「緊張しているのですか?」
ハルカが真っ直ぐに目線を貫いて、空を見ていた
「・・・どうしてですか」
私が訊く。
べつに分かっている。
こういうに決まっている「なんとなく」
「しゃべらないから」
ハルカは、言った
「私は 緊張してなどいません」
最近は、言葉づかいも安定してきて…でも、ハルカは丁寧語で、私はちょっと男っぽい感じ やっと陰陽道の生活に慣れてきた
「琥珀ノ末裔…?」
隣で、カイが本を読んでいた。その朱い緋色の本の表紙には 琥珀ノ末裔 とだけ書いてあった。
「そうだ。琥珀ノ末裔…琥珀という陰陽道の一族…恐れるべき者なんだ。でも今は…子孫ではなく 末裔というべき者しか 居ないらしい」
「琥珀ノ末裔なら存じています」
私が言うと、ハルカが口をはさんだ
「私も読んだことがありますね。陰陽道の光、だと。朱色の瞳をした一族だと言いますね」
「私のような、瑠璃色の瞳では 琥珀ノ末裔はあり得ないのか」
ミコトが拗ねたように言うと。
「もしかしたら、ミコトが琥珀ノ末裔かもね!…」
カイが、ちょっと顔を緩める
「どうしてですか?」
この通り ミコトは瑠璃色の瞳だ
「アイコンタクトすれば瑠璃色にでも朱色にでもなるぞ」
とカイが真面目な顔をして言う
「陰陽道に 冗談と嘘はいけません 修行の妨げです」
厳しくハルカが言った
———そう、私、ミコトには 優秀なハルカとカイという、先輩陰陽師がいる
そして、私ミコトは…… ——陰陽師——