コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 琥珀ノ末裔 *忘れられた日* ( No.43 )
日時: 2013/12/27 20:04
名前: 環奈 ◆8DJG7S.Zq. (ID: qdhAso1A)

「身固めはしたか?交通安全の護摩ならちゃんと叩いておいたから」
と、ウララノが陽気に馬車に乗り込んだ。

いつもと違う馬車で、パトロール!みたいな感じ。開けた感じで、周りが良く見える構造になっている。

「はい。お願いします」
ちょっとドキドキするけれど、ここで行動が良く見られたら、自分のランクもupするかもしれない!
最近のハルカは、レベルアップばかり考えている。

「お願いします」
中に乗り込んだのは、ウララノ、ハルカ、運転手、警察師の資格を持った、陰陽師数名だ。

(ふう)
馬車がリズムよく揺れる。気持ち良くて眠りそうになるまぶたをぎゅっとあげて目を開ける。

と、ウララノが100枚以上はあろうか。というほどのチラシをハルカに押し付ける。

「さあ、ここで降りなさい。あと30分もしたら、ここに来ます。それまでチラシを配れ。一言コメントを着けたり、優しく振舞ったりして、住民たちと触れ合いなさい。名前を教えあったり、荷物を運んであげたり、チラシを配りながらパトロールするの。 
30分後に集合だ。私は、このもう少し先で、チラシを配り歩くわ。いいわね?30分後集合よ あとで 住民に話を聞いてあなたの出来栄えを聴きますからね。」

ウララノがワケのわからないコトを繰り返した後、馬車はハルカを残して去っていく。

「ええ…っ」
しかたない。でも、これ全部を、パトロールしながら、住民と触れ合いながら配るのだ。
しかも、ウララノは、あとで住民からハルカの仕事の出来栄えを訊くと言っていた。

「頑張るぞ!」
チラシの内容は、式神事故の話、陰陽道の力の怖さの話や、魔術師から身を守るための話…。

これは大切だ。

と、目の前の階段をおばあさんが通るのを見て追いかけつつも、ハルカが言った。

「こちら、お願いします。」

「まあ、ありがとうねえ」
せっかくなので、階段の上まで おばあさんを見守ることにした。

「大丈夫ですか?」

「ありがとう。」
と、階段を登り終えたおばあさんは去っていく。

———と。

小さな子の泣く声が聞こえ、走り出す。

「どうしたの?」
そこは小さな公園だ。
お母さんは居ない…迷子?

4歳くらいだ。

「ふわふわ…っふわふわがぁ…」

「ふわふわ?」
よくわからない言葉に、ハルカが首をかしげる。

とりあいずぐるりとまわりを見渡す。

そばに、小さなトイプードルが居るのを見て、コイツか。と、ハルカが連れてきた。

「どうぞ」
と言うと、

「ちがーう!」
と余計に泣き出してしまった。

「ええー!!」
また周りを見渡す。 そばにある大きな大木の上の方に、風船が飛ばされたらしい。赤色が映える。

「待ってねえ、今、取ってあげる。」
と言うと、ハルカは呪文を唱えた。

「急急如律令 『手』」
が、変化したところはない(

「あれっ。急急如律令 『手』」


「おかしいな。あ、呪文がおかしいのか!」

「急急如律令『取』」
ハルカが言うと、大木がゆさりと動き、風船がハルカの手元に!

「ほら、どうぞ。」
と、一緒にチラシも渡す。

「ありが…とう。———」
でも、お母さんが居ない。

「よし!」
その男の子を抱きかかえ、少し歩いた。

「すみませーん、この子のお母様いらっしゃいますか?」
なるべく、声を張り上げて、恥ずかしいけれど本性を忘れて、ハルカは叫んでいた。

…でも、お母さんは現れない。

次第に男の子も泣き顔になってしまう。

「仕方ないなあ…。」
時計を見ると、もう30分経過しそうだった。

「…ヤバい!!」
とりあいず通りがかる人全員にチラシを配る。

「魔導師には気を付けてくださいね。」

「これお願いします」

・・・・正直、疲れます。

もうどうしようもないので、その男の子を抱きかかえ、待ち合わせの場所へ。

「…あら、遅かったわね。」
ウララノ、余裕そうな顔

「しかもチラシ!余りっぱなしじゃない!」

「いえ…。その、この子の風船を取ってあげたり、迷子探しをしていたもので。」
と、目を伏せた。

「そうですか。その子はここの近くの警察に預けるとしても、出来栄えがねえ……」
とウララノが恨めしそうにハルカを見る。

このままじゃ、ミコトまでが悪く見られる。

「ああ!!」
その人は寄り添ってきて、ハルカの元までやってくる。

「…ああもしかして、」
と馬車を見るや否や、顔を青ざめた。

「この子、私の子なんです。目をちょっと離した隙に居なくなってしまって…。保護してくださり、ありがとうございました。本当にありがとうございました!」
と、深々とその人は頭を下げた。

「…いえ。だいじょうぶですよ 」
ハルカは、にっこり笑顔で言う。
なによりも、この子のお母さんが見つかってよかったそう思うばかりだ。

「では」
ウララノが最後、笑顔で占めた。
——
馬車の中。

「あなたの働きぶり…認めたわ」
ウララノがぼそりと。ハルカに言った。