コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 琥珀ノ末裔 *忘れられた日* ( No.50 )
- 日時: 2013/12/28 11:25
- 名前: 環奈 ◆8DJG7S.Zq. (ID: qdhAso1A)
「俺、大失敗したんだ。」
お屋敷の裏庭だった。
誰も、誰もいないから カイが此処に来たのだ。
「だい・・・しっぱい?」
ハルカが問いだした。
「そう。」
カイが弱みを見せることはあまりないので ちょっと心配げになるハルカである。
「…検査だよ。俺には式神のあと、人形の試験、渾天儀の実技、太上神仙鎮宅霊符の唱えをしたんだ。」
「え!そんなに。ですか?」
ハルカが言う
「そう。結局、部屋についたのはハルカより後。しかもクララギさまじゃなくて、他の誰かに点数をつけられたんだ。隣の部屋で。でもクララギ様の片身で、ずるはしなさそうだ。」
と、言った。
クララギ様の陰なら、たぶんちゃんと同じように採点してくれるだろう
「で、人形の試験…。重大な失敗を犯したんだ。人形は自分の穢れを押し付けるもの。なんだけど、でもそうじゃなくて、俺は逆に自分に穢れを押し付けたんだ。」
「え!」
人形…いつしかハルカも聞いたことないわけではない言葉。
紙や木材・草葉・藁などで人の形に作られ、それにより患部等を撫でることによって自分の穢れをこれに移しつけて祓うのに使われるもので、流し雛の風習はこれを元としている。
「それだけじゃない、一方で人形に相手の名前等を記し、その人形を傷つけるなどして、相手に事故死や病死などの重大な災いをひき起こす呪いとして用いたりするんだ…おかしいと思わないか これは陰陽師の技ではなく黒魔道を扱う魔術師の実技」
「…そうだね。」
よくわからないけれど ハルカは一応頷いた。
「…それで、俺は穢れを押し付けられて、しばらく動けなかったところを、クララギ様に助けてもらったんだ。でもこれじゃあランクは下がる一方だろう? しかも、結構今も息苦しいんだ。」
「大丈夫?!」
ハルカは、やっと事態に気付いて、カイの背なかをバンバン叩いた。
「あ、痛いって。」
「…やっと、しゃべり方よくなったね。」
いまは二人だから 陰陽道の決まりに左右されることはない——でも。
どうして 冬至の日にこんなに哀しいことが起きたのだろう。
上下関係をどうして厳しくするのだろう。どうしてこんな風に思い知らされなくてはならないの?
どうして…。
この気持ちは 前にハルカが思ったものとおなじ。
ハルカひとりが取り残されていきそうで頑張ろうとしてきた。
でも今回だって結局ミコトに助けられてきたんだ。…。
「まず、あのサギリってヤツ、今日賞状を渡してくれた人だと思うんだ。」
「・・・あ、確かに!なんか見覚え合った気がするなあ…。」
ハルカも頷く。