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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: こぼれた星屑の温度 (たんぺん) ( No.1 )
- 日時: 2013/12/16 21:51
- 名前: ぶー子 ◆gXRXzU/zlQ (ID: 1j9Ea2l5)
彼のコーヒーを一口、飲む。
「ん、やっぱり苦い!」
「お前にはまだ早いんだよ、ガキが」
もう、その「ガキ」って言葉やめてよ。溜息交じりにそう呟いた。彼の「ガキ」をこれまでに何度聴いてきたことか。彼と私のとしなんてさほど変わらない、それなのに彼は、毎日のように私のことを「ガキ」として扱っている。私はガキなんかではない。それなのに、また、そうやって。
「ガキにガキって言って何が悪いんだよ」
「私はガキじゃない!」
「いや、立派なガキだ」
ガキガキ、ガキガキ。耳障りな言葉である。濁音は気に食わない。彼は私に見せつけるかのようにコーヒーを飲んでゆく。バカやろう、本当はコーヒーなんて嫌いなくせに。苦いの大嫌いなくせに。
「大人なフリするの、楽しい?」
コーヒーを飲み続ける彼に、私は静かな声で問うた。すると彼の眉間は、私の言葉に反応したのだろう、ピクリと上に動いた。ゆっくりとカップから口を離し、コトンとテーブルに置いた彼はその口を開く。
「大人なフリ?」
たったその一言だけをこぼした彼の表情は険しい。眉間に皺を寄せ、不機嫌そのものである。そしてその細くも丸い瞳が私をぐっと睨みつけていた。フリはフリでしょ、それ以上でも以下でもない。貴方は子供のくせに、ううん、ガキのくせに大人なフリをしてるってこと。違う?
言ってしまいたかった。だが私は、次々と頭の中で形成されてゆくその言葉たちをのみこむようにして口を閉ざした。まっすぐにこちらへと向けられた彼の瞳は、私を睨んではいるものの、小さな頃から相も変わらず私を恐れているように思えたからである。
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