コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: こぼれた星屑の温度 (たんぺん) ( No.13 )
日時: 2014/01/18 22:18
名前: ぶー子 ◆gXRXzU/zlQ (ID: 1j9Ea2l5)
参照: 男の子視点で書くのって難しい

「あなたまで、橘さんなんて呼ばないでよ。小さい頃からの仲なのに」
「……そうだね、ごめん」
「謝らないでよ。私が悪いみたいでしょ」
「ごめん。……あ、ごめん」
「もう、だから謝らないで」

言ってから歩く足を止めた彼女は、眉をキュッとひそめてこちらを睨んでいた。つられて僕も足を止めたが、先程の彼女からは想像もつかないほどに、表情は不機嫌そのものである。コートを染みとおってくる冷気と彼女の険悪な顔つきに、僕の身体は小さく震えた。
建物を映す濡れた道路沿いに立ち止まる彼女は、一向に動こうとはしなかった。何か言いたげな瞳でこちらを見たかと思うと、その尖った口を開いて言った。

「ねえ。さっきのことなんだけど、何であんなこと言ったの」
「あんなこと?……ああ、課題の?」
「そう。余計なこと言ったよね。すごく迷惑だった」
「……橘は、なんで言い返さないんだよ。人の課題押し付けられて、嫌だろう?」
「全然。むしろ嬉しいよ。あの時の彼女たちの顔、見たでしょ? すごく笑顔だった」

ああ、私嫌われてないんだなって、思える。彼女はぽつぽつとそう言葉を零した。

「まだそんなこと、言ってるんだね」

僕がそう返すと、彼女は決まりの悪そうな顔で俯いた。

Re: こぼれた星屑の温度 (たんぺん) ( No.14 )
日時: 2014/01/18 23:34
名前: ぶー子 ◆gXRXzU/zlQ (ID: 1j9Ea2l5)

「高校に入ってから、変に人目を気にするようになって……」

瞼を閉じてそう言った彼女の声は、微かにではあるが震えていた。その気持ちは隠しようもなく表情に表れている。さびしそうな影がちらちらと彼女の頬の辺りを掠めていた。

「何か、あったんだろう? あいつらに何かされたとか」
「ううん、別に何も。ただ————」

言いかけたところで、彼女は言葉を飲み込んだ。思い直すようにして口をつむいでいる。僕に対しては、いつもなら口がだるくなるほどよくしゃべっているくせに。今の彼女の姿は、まさに先程の生徒らに接する時のようにはっきりとしない、ただただ柔らかい微笑みを浮かべるだけのものである。
彼女は本来の自分の姿を押し殺していた。僕の目にはそう映っているし、昔から彼女のことを知っている人からみてもそうであろう。こうまでも変わってしまったきっかけは分からないが、彼女のことだからきっと、精神的に傷つくような出来事があったのだろう。彼女の心は意外にもナイーブなのだから。