コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: こぼれた星屑の温度 (たんぺん) ( No.17 )
日時: 2014/01/22 20:29
名前: ぶー子 ◆gXRXzU/zlQ (ID: 1j9Ea2l5)
参照: 思うように書けない…う゛う゛

けれども傷つきやすいわりには人当りが強く、鉄板みたいに無神経である。何とも面倒くさいものだ。 

「君がそんな調子だと、僕の調子も狂う」

僕にだけは平然とした顔で、ぼろぼろと強い言葉を吐き出す。そんな彼女のままでいてくれないと、僕も彼女に対していつも通りに接すことなどできない。いつも通りの、彼女のことが少し嫌いな僕で、いられない。彼女が、本来の繊細で融通の利かない、お堅く無神経な部分を見せられる相手は、恐らくではあるが、僕ただ一人であろう。だからなのか、尚更、彼女にはせめて僕の前でだけでも良い、本当のありのままの姿でいてほしい。そう、思う。
彼女は俯いたままスッと手を伸ばし、壊れやすい宝物のように僕の手をそっと握った。

「誰かから嫌われるのが、恐くてたまらない」

彼女のか細い声が僕の鼓膜を震わせた。僕が聞きたいのは、嫌われるのを恐れるようになったきっかけであるが、このまま話に踏み込んだとしても彼女を傷つけてしまうだけだと思う。だから僕は、一つ一つの言葉を大切に選びながら言った。

「僕は、橘のことが好きかと聞かれたら、多分、嫌いって答える」

僕の言葉に、彼女は伏せていた目をこちらに向けた。

Re: こぼれた星屑の温度 (たんぺん) ( No.18 )
日時: 2014/01/22 23:09
名前: ぶー子 ◆gXRXzU/zlQ (ID: 1j9Ea2l5)
参照: オチが思いつかん

驚きとも、悲しみとも、怒りともとることができない、妙にはっきりとしない表情がみえる。彼女自身、故意に気持ちを隠しているだけなのかもしれないが。
僕は握られたままの左手にそっと力をこめて、彼女の手を握り返した。今から言おうとする言葉に、彼女が怒ってしまわないか不安で仕方がなかったためだ。

「冗談が通じなくて、遠慮もなくて、すごく無神経だろう? 橘は」
「何それ、喧嘩うってるの?」

案の定、彼女は握っていた手を勢いよく振り解いた。

「ああごめん、怒らせようとしてるんじゃなくて」
「何なの、結論を先に言って。あなたはいつもまわりくどい。だから私が怒るんだよ」
「……そうだね、ごめん」
「それにさっきのあなたの言葉、結構傷ついたんだけど」
「……ごめん」

Re: こぼれた星屑の温度 (短編集) ( No.19 )
日時: 2014/01/28 11:52
名前: ぶー子 ◆I3wKSjB7xs (ID: 1j9Ea2l5)
参照: やっと完結できたあ

ああ、こうだから、彼女のことが苦手だ。信号のように顔色がコロコロと変わったかと思うと、最後には機嫌を悪くして僕を責めたてる。

「とにかく、まず最初に何が言いたいのかを言って」

彼女の怒りのせいで張り詰めた空気が流れている。無論、怒りの矛先は僕に向けられている訳だから反論すらできない状態だ。
ふう、肩の力を抜こうと深い息を吐いた。

「橘は元々、嫌われやすい。そういう星の下に生まれたんだろうって」

僕の言葉に、彼女はふっと息を漏らした。その息が笑ったためのものなのか、ため息からなのか、確かめる余地は無かった。

「嫌われる運命にあるからこそ、在るがままの姿でいいんじゃないの。良い自分を取り繕って満足したところで意味はないだろう。今の君は、自分の首を自分で絞めてるだけにみえる」

言い終えたところで僕は、小さな後悔の波に呑まれた。また彼女を傷つけてしまったのではないか、と。そんな僕の心配をよそに彼女は一向に口を開かないでいた。

「怒ってる?」

問いかけると、彼女は二秒だけ僕に目を向け、そして逸らした。

「別に怒ってないよ。痛いところをつつかれたから、ちょっと黙ってただけ。言い返す言葉がなかったからね」

泣きながら彼女は言った。驚きのあまり、僕は開いたままの口を閉じることが出来なかった。いや、閉じるということを忘れてしまっていた。あのいつもの気の強い意地っ張りな彼女の姿が、思い出せないくらい昔のことのように思えてしまう。太陽の光のように当然でありふれている僕の日常が変わってしまうような、そんな不思議な感覚に陥った。
彼女をバックに優しい日の光が降りそそいでいる。彼女の姿はひどく美しく、それでいて情けなかった。あの日の天使のように柔らかい笑みを浮かべていた彼女はもういない。彼女の静かな泣き声だけが僕らの辺りをつつむようにして、時間の流れを表していた。


/彼女が天使だったころ

おわり