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Re: 6年生少年少女 再会編 9 ( No.121 )
日時: 2014/02/22 09:40
名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)



26話(再会編最終回)



「私が愛している人はだな……………うーん、この際どっちでもいっか、後で弁解すりゃいいし……………そこにいるぞ」

みなおは手を挙げたまま、はづきと中村をチラリと見た。
発言途中で明らかにおかしな言葉が入っていたが、すっかり頭に血が上っているたくには聞こえなかったようだ。

「そっ、そこの、はづき君か、中村くんの、うっ、内の、どちらかなんだね?!」
「……あ、うん」

たくは顔を真っ赤にさせながら、はづきと中村をあんまり怖くない顔で睨み付ける。

「は…?まみみっへんも、まみむ(なにいってんの、あいつ)……?」
「んで、どっちなの?みなおさ〜ん」
「ん?…………言うのはちょっとアレだしなぁ…………私が(適当に)指を差した方だ」
「ふ〜ん」

緊張感皆無のはづきは、ヘラヘラとニヤニヤ笑いを浮かべながら、中村の口を塞いでいない方の手を、たくに向かってヒラヒラと振った。

「…だってさ、たく君」
「………僕は誰であろうと処してしまえる覚悟はしてるから……」
「もんまももはふほみへんまめぇもっっ(そんなものかくごしてんじゃねぇよっっ)!!」
「…いつまでも腕挙げてんの疲れてきたから、そろそろ行くぞ」
「ほまめもみみはめんはま(おまえもいいかげんだな)!?」

軽く、いい加減なみなお。
みなおはとりあえず、一刻も速く、たくから離れてしまいたいがために、即席で、逃げる口実をつくったのだ。

即席だし、適当に事を済ませてしまおう。

これがみなおの考え方だった。

「では。——恨むなよ」

みなおが徐々に、指を、はづきと中村の方に移動させる。

「君にキメタッ!(決めてないけど)」

そうやって決め台詞的なものを発し、みなおはビシッと、男子2人の微妙な境界線あたりに狙いを定めた。

この辺りを指しておけば、後は適当に、勝手にたくが疑った方が処される。

指の向かう先は、はづきでもなく、中村でもなく、2人のいる場所よりも遠くの窓の外に見える、体育館の入り口辺りをとらえた——。

はず、だった。




————事が起こったのは突然だった。




「————んじゃ、盾、交代〜」
「…………ぷっ……はい?!」
「あっ、みょんみょん後藤!?なにしやが…っ!!」
「…………………っっ!!」


はづきが突然、中村を強制的に、みなおの指が指し示す方向に移動させたのだ。





「……私が愛する者、だ…」
「違うっ!誤解だって!!誤解誤解誤解、誤解なんだよ!!!!」

今は冬だと言うのに、変な汗をだらだらと流しながらも平常心を保とうとするみなおと、今にも爆発してしまいそうなたくを交互に見ながら、必死に誤解を解こうとする中村。

「なっっ……な、なななな…!?」

真っ赤な顔で、ワナワナと震えているたくは、噴火直前の火山のようだ。


「中村ぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!」


——ついに、大爆発を起こしてしまった。

「お前っ、彼女がいるって言ってたじゃないか!!」

——変なところで。

「は!?おれはそんなこと言ってないし?!」
「ふぅ〜たまたっ、ふぅ〜たまたっ」
「はづき、こいつになに吹き込んでるんだ!!」
「ゆ、許せない…!二股なんて、僕は絶対許さないぞ!!」
「大城のことはどうでもいいのかっ!?あんなに騒いでおいて!!」
「…はっ!ならば中村は人妻を奪い、二股までかけている嫌な奴だったのか!!」
「最初の『…はっ!』て、完全に忘れてたんだろ!?…嫌な奴のところは否定しないけどな!」
「や〜いや〜いっ、い〜やな〜奴っ」
「はづきうるさい!!」

挑発してくるはづきと、キレまくりのたくに連続で突っ込み続け、中村は物凄い疲れが押し寄せてきた。

「はっ、速く、処さないとぉおぉおおお!!!!」
「とりあえず落ち着こうっ!?なぁっ?!」
「ごーもん、かんきーん、しょっけいーだい〜♪」
「ニヤニヤしながら物騒な言葉をならべてるなよ!?」


——まだまだ続くかと思われた、中村とたく(とはづき)の言い争いは、ある人物の一言によって終わりを迎えた。


「……男子のアホ共!」

突然、今までリナと背景になって溶け込んでいたくみが、大きな声で男子陣に渇を入れたのだ。

「ん?なんだい、くみちゃん」

いきなりくるりと表情を変え、爽やか笑顔になったたくを、くみは汚物を見る目で見つめた。

「コウとの扱いの差がすごいッスね…いや、そこじゃなくって!!」

くみは時計を指差した。

「清掃の時が迫ってるッスよ!!」





「…もう掃除が始まる時間なのか」
「え!?そ、そうなのかいっ?なら、僕は帰らないといけないね」

たくは、今日、初めて出会った同級生を見回してから、最後にみなおと目を合わせた。

「今日のは…約束のうちに入らないよね、だって乙羽がいないもん!」

照れたようにはにかむたく。みなおは、無表情の中にも、どこか優しさを感じさせるような表情で、そんなたくを見つめ返した。

「また、来るから!!」

爽やかに走り去ろうとしたところで、たくはいきなり急停止し、中村の方を睨み付けた。

「……今度会ったら、決着だ!」
(……できれば一生うやむやにしておきたいな、面倒だし)

また走り出したたく。そこに、声をかけるものがいた。

「今度連絡先教えてね〜、たく君」

裏のありそうな笑みを浮かべていたはづきだ。
たくは走り出すのを止めて振り返った。顔にはもちろん、爽やかな満面の笑みを浮かべて。

「うんっ!喜んで教えてあげるよ!!」

たくは今度こそ颯爽と走り去って行くのかと思いきや、最後、皆との別れ際に、忘れずに一言を付け足しておいた。


「リナちゃん、くみちゃん、ほんっとに可愛かったよっ!女の子紹介よろしくねっ!!」
「「断る!!」ッス!!」


廊下の遠くへ消えていくたくを見つめながら、一同は互いに顔を合わせた。
いつもはバラバラな一同もたくに対する認識だけは、共通だったようだ。

『爽やかに変態で、今のみなおの人格に大きな影響を及ぼしてしまったと思われる人物』





みなおは、たくが去った後、掃除分担の初等部第二理科室へ向かう途中、ずっと、こんなことを考えていた。



(…本当にもう、二度と来るなよ!)



考えていることとは反対に、表情は温かいものだったということは、誰に知られることはなく、本人も自覚がないようだった。





おい、佐々木か…?
ぎくっ、し、白元先生!!
廊下走ってんじゃねぇよ…!
ごっ、ごめんなさい!もう走りません!絶対に!!
…他校生のガキはちゃっちゃと帰れよ……。
はいっ!ではまたっ!
おい、また走ってんじゃねぇか…っ!…今、『また』とか言ってなかったか…?…まぁ、ガキなんてどうでもいいか…。

…廊下を走っては駄目だということを教えないとな…。追うか。





再会編、完。

変人物語は、なお、続く模様です。