コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 6年生少年 3 ( No.14 )
- 日時: 2014/02/23 14:14
- 名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)
7話(少し長め)
後藤はづき。
彼は、ドドドドSのイケメンである。
頭にはアホ毛…、彼が言うには『みょんみょん』があるのが特徴だ。
人の苦しむ姿が大好きな彼は、顔のおかげで女子達からの人気はあるものの、コクられては酷いフリ方をするらしい。
「君、一度生まれ変わってから出直してみなよ。今の家畜以下の生き方よりはまともになると思うよ。まぁ、動物園で見世物になりながら生活できる程度にはなれるでしょ、あははっ★」
黒い笑みがこれほど似合うのは、多分、少なくともこの学園内では彼しかいないと言われている。
☆
はづきのお気に入りは、中村コウだ。幼馴染みであり家が近所にあるため、教室内ではよく一緒にいる。まぁ、はづきが一方的にくっついているだけなのだが。
「おはよう中村さん。今日から新学期じゃん」
「そーだな」
「こういうときに調子に乗ってる奴等、オレは大ッ嫌いだな★」
「……今日も朝から黒いな」
朝、登校途中に偶然出会っちゃいました、的な感じで、はづきは中村に駆け寄った。当然、タイミングを図っての登場である。
中村が長いマフラーをぐるぐると何重にも巻いて、ぬくぬくとしながら歩く姿は、どう見ても中学年程の少年にしか見えない。
「えぇーっ、バスケってインドアスポーツだから焼けないとおもうんだけど」
はづきはバスケットをやっているのだが、体育の時間では一ミリも本気を出していないらしい。同じバスケクラブに入っている男子等が「本気を出したらボールが禿げて爆ぜる」と言っている辺り、本当は相当上手いようだ。
「そういう意味じゃない……っていうかはづき、ダンクとかできんの?」
「いやぁー、中村さんよりは身長あるけど、難しいかなー。そういえば中村さん、ゴールの……ほら、網になってるとこ、触れることできる?」
「お前、おれを馬鹿にしたいだけだろ」
「うん★小さい子は、地を這いつくばりながら生活したほうが良いと思ってるよ★」
「潰す」
「中村さんも、踏みつけられないように気を付けなよっ★」
「…滅せ」
「今度から、蟻と同じ扱いにしてあげよーかなぁ、あはは★」
「……うぅっ…滅せ…」
はづきの連続ドS発言に、中村はKO寸前だった。寸前で留まることができるのは、よほど肝が据わっていて、度胸のある人間か、何度も何度も繰り返し心をえぐられて、抵抗力のついた人間くらいである。もっとも、中村は後者だ。これまでに、数えるのをあきらめてしまうほどの暴言やら罵倒の言葉を浴びさせられ、倒れない程度に抵抗力は身についていた。
だが、心はズタボロ。今にも泣き出しそうな表情になっていた。
それがまた、はづきの大好きな顔だったために、中村は学校に着くまでずっと罵られ続けた。
はづきのみょんみょんは、その後8分はみょんみょんし続けた。
☆
教室内は暖かい天国になっていた。
ついさっきまで、ずっと真冬地獄で鬼の暴力(精神的に来るヤツ)を受けていた中村には、教室が歓喜にあふれた天国に見えたのである。幻覚症状……、ふっと、そんな言葉が頭に浮かぶ。
「おはよー!コウとはづ!」
底抜けに明るい挨拶をしたのは、同じく2人の幼馴染みである、高柳リナだ。
「……………………………………おはよ」
「おはよう、リナ」
「うんうん!今日もはづはイケメンだね☆」
「リナは今日もなんの変哲も無い、凡人以下の顔面だね★」
なぜだろう、今、はづきとリナの間に、火花の散る音が聞こえた。
「…ってゆーかさ、なんでコウは泣いてんの?」
「泣いてない」
「え、だって涙目じゃん」
「泣いてないって」
中村はものすごく不機嫌な様子で、普段の数倍目付きが悪くなっていた。もう、殺人鬼の顔である。目は潤んでいるけれど。
「寒いと目が潤むんだよ。そういう体質なんだよ」
「うちは涙出ないよ?」
「個人差があるんだよ」
「顔、怖いよ?」
「そんなことないよ」
完全に棒読みで、キョトンとしているリナの質問に答える中村を見て、はづきは爆笑したいのを抑える。
するとそこへ、第三者が現れた。
「リナ、コウは、そういう、体シツ、だから、仕方ない」
「パー君!」
同じ3組、片言喋りの宇宙人少年、月ポポパプキだ。
納得したリナは、んじゃねーっと言って去っていった。
「ありがとう、パプキ」
中村は、面倒くさいリナがどっかに行ってくれて、心から「よかった…」と思っていたので、素直に礼を言った。パプキは、なぜお礼を言われたのか理解できなかったらしく、首をかしげていた。
「だって、コウと、はづき、まだ、朝のシタク、してない」
あぁ、そういえば…。リナと立ち話していたおかげで、2人はまだ、ランドセルや上着をきたままだった。
「……ところで」
今度はパプキが、中村を呼び止めた。
「どうして、コウ、泣いてたの?」
ぶぶぅぅぅ—————————————————————————ッッッ!!
はづきは盛大にふきだし、中村の平手打ちが、はづきの頬と奏でた大音量は、学園中に響き渡った、らしい。
変人物語は、なお、続くもようです。