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- Re: 外伝少年少女 〜柴留 咲羅〜 ( No.145 )
- 日時: 2014/02/27 19:19
- 名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)
外伝 〜柴留 咲羅〜
下校時刻になると、子供達は疎らに、学園から家へと向かう帰路につく。
今日は楽しかった、腹が立った、給食のキュウリが不味かった、トイレの紙が無くて不便だった——。
ほとんどの児童が、途中まで帰路の重なる友達と、たくさんの事を話している。
それはまるで、愚痴の言い合いにも見えるし、小さな反省会のようにも見える。
そして子供達は、一通り話し終える前に、道が分かれてしまい、最後まで話を聞くことのできなかった友達に、決まって『ある』言葉をかける。
また明日、な。
じゃあね、続きは明日!
明日…、は土曜日か、なら、また月曜日!
また、次に会える日のことを考えて、家に帰る頃には暖かいものを胸に抱えながら。
「さよなら、またね!」
日が暮れるのを見つめながら。
☆
で、そんな感じに帰路につく同級生を横目に、中村コウは、1人で帰宅していた。
(今日ははづきにあんなこと言っちゃったしなぁ…、さすがに酷かったか…?)
1人で自問自答を続け、考えをまとめるのが、彼なりの反省会だ。
(…いやいや、今回のは明らかにあいつが悪…かったよな!?)
そもそも中村には友達が少ないため、はづき以外の誰かと一緒に帰る、なんてことはあまりしない。
しかも中村は、誰と帰ろうが、結局自分のペースでどんどん歩いて行くことになるだけなのだから、自分についてこようと言う風変わりな奴だけが、勝手に尾行でもしてろ、と考えている始末。
(…意外に話し相手が欲しいものだな…、はづき以外で)
中村がツンデレ的思考を展開させていると、後ろから声が聞こえてきた。
しかも、多分自分に向けられている類いのものが。
「あれれ?今日は3年生、早く帰る日じゃなかったっけ…、あっ、コウさんか!ぷっ——」
「し……、しばとめ、さくらっ!」
中村を真っ直ぐに見据えて、にこにこと笑っているのは、同じクラスの柴留 咲羅だった。
若干平仮名気味に発音したのは、前に、初めて出会ったとき、中村が間違えて「しばる、さきら…?」と読んでしまったために馬鹿にされ(その場にいたはづきに)、それ以来、馴れない人名は若干平仮名発音になってしまうからである。
「おおっ、漢字読めるようになったんだねー、えらいえらい〜」
「…っ!バカにするなよ」
「あれあれあれれ?今日は、はづきさんいないんだ」
咲羅は周りをきょろきょろと見回してから、中村の後ろの電柱をほんの少し驚いたような顔をして見つめた後、「そういうことね…」と呟き苦笑いして、中村に向き直った。
「どうしたんだよ?」
「ううん、なんでもないよ。さぁ帰ろう」
中村は怪訝な顔つきで、再び咲羅と歩き出した。あくまでも自分のペースを崩さずに。
☆
「…おれ、はづきと喧嘩したかも」
中村がなんとなく話を切り出した。それに対し咲羅はあまり驚かず、苦笑いをした。
「へぇ…、やっぱりはづきさんと喧嘩したのか…」
「やっぱり?」
「うっ、うん、2人は常に、2人で1セットって感じだし?」
「言い方キモいな…、発酵女共が騒ぎそうだ」
「あははー、でも、実際誤解を招きかねない言動が目立ってるよ?ぷぷっ☆」
「本当にキモいぞ…!?」
咲羅は時たま話を茶化しながら、やはり後ろを振り返ってはなにかを確認している。
「……なにしてるんだ?」
さすがに怪しすぎると感じた中村が後ろを振り返ろうとしたところで、その視線を、咲羅の体が遮った。
「は?!」
「あ〜…!まぁ〜えをむぅ〜いてあ〜るこ〜♪」
「いつの時代の歌を歌ってるんだよ!?」
中村は素早い動きで、咲羅の後ろの電柱を見た。
なにもいないように見えたが、一瞬、電柱の後ろに特徴的なアホ毛が見えた。
「——ッ!?はづきか?!」
「気のせいだよコウさん!」
咲羅は苦笑いを浮かべながら、必死に、前へ進むように促した。
——が、なんと相手の方から姿を現してきたのだった。
「たしか半径1メートル以内だったよねぇ?中村さん★」
「う……?!」
後藤はづきは、神出鬼没である。
☆
「で、なんで咲羅がいんの?一緒に帰るお友達がいなかったから、不貞腐れてた中村さんに付きまとってんの?」
はづきは黒笑みを浮かべた直後、普段は絶対見せないような鋭い目で咲羅を睨んだ。
普通の者なら、睨まれた瞬間一発で逃げ出すほどの気迫があるのにも関わらず、咲羅はにっこりと笑う。
「今日に限ったことでもないよ?ねぇ、コウさん」
「あ、あぁ…」
中村は『素』に近い表情になっているはづきを久しぶりに見て、心底驚いているようだ。目を見開き、変な汗をだらだら流している。
「それか、1人で不貞腐れてた中村さんへの、同情かな?」
咲羅の頬が、ピクッと、僅かにひきつった。
「…それは違うよ。単なるはづきさんのこじつけだよね?」
「はっ…、余計なお世話だよな、同情とかって★」
それに追い打ちをかけるように、鼻で笑うはづき。
咲羅は苦笑いのような無表情のような、なんの感情も籠っていないような笑みを浮かべている。
(……こいつらって、本当に仲悪いなぁ…)
出会うたびに、2人の溝が深まっていくような気もする。
はづきは未だに咲羅を睨んでいる。
すると、咲羅の方が先に、「勘弁した」、とでも言いたげな様子で深いため息をつき、今度こそ心から困っているような苦笑いになった。
「…僕は、いつか、はづきさんとも仲良くなれる日が来るのを待っているよ」
その後咲羅は、はづきがどうしても自分と一緒に帰路を歩む気になれない、ということを悟り、別の道を通って帰宅した。
別れ際に咲羅は、「また、明日ね」という言葉を放ち、2人に手を振ると、その場から静かに去っていった。
☆
なんでだろ。
俺、あいつと仲良くやってる未来が見えないや。
は…?
お前が一方的に撥ね飛ばしてるだけだろ。
ふふふ。
違う、違うんだよ。少し、ね。
俺は、あいつみたいに、笑顔のレパートリーが少ないから。
似た者同士は、反発しちゃうもんだね。
…それってどういう……?
キャラ被りは嫌だっつーこと。
変人物語は、なお、続く模様です(意味不明な終わり方である)。