コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 6年生少年少女 卒業編 2 ( No.169 )
- 日時: 2014/03/18 17:42
- 名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)
29話
練習が終わり、6年生全員は教室へと帰って行った。
「……なぜ、こんなに疲労を感じるんだ……」
白元は、カオスな宣言の数々に、度々指摘という名のツッコミを入れていたおかげで、寝込んでしまわないのが不思議なほどの疲労感を感じていた。
「ふははっ、お疲れのようだね、れいじクン」
白元がやれやれと溜め息をついていると、朗らかに、仮面(本日は黒い熊のゆるキャラ)を着用した学園長——自称『校長』——が、軽い足取りで歩み寄って来た。
「……なんだ、馬鹿校長」
「バカだなんて、ヒドイなぁ〜」と言いながら、ポリポリと頭を掻く校長からは、不思議な雰囲気が漂っている。少なくとも、『常識人』からは放出されない類いのものだ。
(…………これが、卒業生である『伝説の変人』の空気なのか……?)
白元の脳内会議の議題になっている当の本人は、そんな事も知らずに、明るく、にこにこ(仮面で見えないが、多分これしかない)しながら喋りだした。
「れいじクーン、今日の給食って、なんだったっけ?」
「………お前、本当に昔から何にも変わってねぇな………」
「ふっふっふ〜、ナンだよ!!」
「………あ?」
「今日の給食は、ナンだよ!!」
「………あ?」
「ナンだって!!」
「………てめぇ……、俺に喧嘩でも売ってんのか……?」
ちなみに今日の給食は、『ナン、牛乳、ドライカレー、ミックス揚げ、オレンジ』で、校長は答えを言っているのだが、あえて白元に聞いたのである。
そう、白元は変な所でおバカさ加減を発揮するため、こういう所で発揮されてしまうと、大変面倒なのだ。
校長はそんな白元を、おちょくるのをやめない。
「ナンだよ!!」
「………おい」
「ナンだって言ってるでしょっ!!」
「………お前」
「ナンです!!」
「………いい加減に」
「ナンだわよ!!」
「………………しろよッッ……!!!!」
白元からドス黒いオーラを感じ取った校長は、スッと引いた。限度は分かっているのである。
っていうか今の、なんかデジャヴ。
「ご〜めんごめん、ちょっと聞いてみたかっただ・け・さっ☆」
「やめろ、気持ち悪ぃ……」
至上最高のウザ顔(仮面で見えないが、絶対これしかない)で、変なキメポーズを決めた校長を、白元はスッパリと言い切った。
これも、2人が小学生からの付き合いで生み出せるやり取りである。
そう、校長も白元も、ここ、変人学園の卒業生なのであった。
白元は幼馴染みの変人さに呆れ、深い深い溜め息をつき、疲れたようにボソッと呟く。
「………はぁ………、校長が変人だから、生徒まで変人になっちまうんだろうな………。」
校長は、それには答えず、フッと薄く微笑む(仮面で見えないが、多ぶ——以下省略)だけだった。
☆
校長職は、非常に面白い。
この仕事で、子供たちと過ごす時間は、毎日を明るく、元気に過ごす力に変換される。
でも、教育委員会の方々は、ここの学園の『仕組み』に、あまり良い印象を持っていないようだ。
理由として、「社会性に欠けていて、集団行動をしよう、という考え方が無い」ということが挙げられていたような気がする。
うーん、会議の途中、ちょっと眠ってたから、よく覚えていない。反省。
そうだ、「頭のネジが緩い人間を育成する施設なのか」とか、偉そうな人が言ってた気もする。
その意見が、自分には理解出来なかった。
いや、それ以前に、どこが変なのかさえ、分からない。
それは、自分が『変人』だからなのだろうか。
そもそも『変』とは、なんなのか。
………はい、シンキングタイムは終了。
『普通な行動をせず、奇行が目立つ』『話す事が常人と違う』『非常識』……ふむふむ、そんなトコロだろうか。
なら、逆に聞こう。テストの問題みたいに、敬語で聞くからね。
君たちが思う、『普通』や『常識』とは、何に基づいて決めているのですか?
☆
「なぁ、岡本」
みなおが、偶然廊下で出会った、岡本 ユリに声をかけた。
「なんですの?」
ユリは仕方なく…、といった風に、みなおの方に体を向ける。
それを確認したみなおは、いつも通り淡々とした様子で喋り出した。
きっとまた、下らない事を喋り出すのだろう。
そんなことを考えていたユリの考えを、みなおは簡単に打ち砕いた。
「ここの学園の式という式は、全て異質だな」
「……ッッ?!」
なんと、その質問は、みなおにしては珍しく、真っ当な内容だったのである。
続く……。