コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 変人又は奇人(それと馬鹿)。《更新 8.21》 ( No.205 )
- 日時: 2014/08/21 11:32
- 名前: 目玉ヤロウ (ID: BKGAQbzV)
3.「人に名前聞くんなら、自分から名乗ってよ!」
今日もいい天気だ。
蒼い空には、金の髪がよく映える。
なんという、爽やかな登校。
あの小者が、登校中の我が身に厄をもたらしたのが一昨日。時が立つのは早いモノである。
「それにしても最近は暑くなってきたッスねぇー……」
まだ春真っ只中とはいえ、徐々に暑くなって行く天候に、私の心も熱く燃え上がっているのが……解るッッ!!
「燃え上がれ、我が魂! 魔神眼、開が……ッ!!」
魔神眼のチカラを解放しようとした矢先に、私の目には最悪なモノが映った。
「あれ……っ、おっさん?!」
「おっさんじゃないッスッ!!」
一昨日のクソガキ……、もとい小者だった。
まるで、路上でいきなり奇行にはしるバカを見るような目で、私を見つめて来た。
なんだその哀れみさえ感じる目は。私は奇行になんて走っていないのに。
「なに道路のど真ん中で恥ずかしいことやってんの?!」
「魔神眼のチカラを解放しようとしていたッス!!」
「なにそれ痛っ!!」
「小者にはわからないッス!!」
「わかるわからない以前の問題だよ!!」
「貴様は魔神眼も持ってないくせに生意気ッスね……!」
「いや普通持ってないから!!」
く……っ、ことごとく魔神眼を否定するなんて。所詮は小者か。
「ムカつく野郎ッス……!」
「あー、もう……。 ここじゃ他の人の邪魔になるじゃん……」
……そ、それもそうか……。
小者のクセに一般常識は兼ね備えているのか、コイツ。
「朝くらい静かに登校しなよ」
小者は呆れ顔でそう言うと、私をグイグイと道の右側へ押しやった。
うーん、こんな小者に諭されるなんて。なんという屈辱。
私はそこで、先程までの熱い気持ちを一旦忘れ、ふと冷静になって小者を観察する事にした。
敵の事を知るのも、戦では必要になって来るだろう。
小者は無防備に「は? なにジロジロ見てんの? キモ……!?」とかなんとか言っていた。ふっ、哀れなガキだ。もう貴様の事など見通しているというのに……!!
「どうしよう、そこら辺にケイサツは……」
「ふっ、ケーサツなんぞのチカラを借りようとは……」
「おまわりさーん、このおっさんこわいよーっ!」
「ケーサツなんて魔神眼の前では無力も当然……」
「おまわりさーん、このおっさんサラッとコウムシッコーボーガイしようとしてるよーっ!」
「ケーサツ……、将来は我が僕として働く事となるのだろうな……ッ!!」
「おまわりさーん、このおっさんイロイロとヤバイよーっ!!」
こうやって会話していると、ただの小学生にしか感じないのだが……。
外見の特徴としても、目立つ所は無い。一般人と遜色無いと言えよう。
あえていえば、男子にしてはまつ毛が長めで、瞳もまるいため、中性的な印象を受ける。
言いたくはないが……、こいつ、異性からなかなかモテるんじゃないだろうか。
くっ、羨ましい。
……羨ましいッッ!!
「な、なに、おっさん? 目が怖いんだけど」
「……なんでもないッスよー」
「ふ、ふーん……」
ただ、すこし突っかかる点があった。
こいつの顔、どこかで……?
いや、一昨日の事は関係ない。それに、『どこかで』というのも、かなり頻繁に見かけているような気がする。
こんな小者に似た人物が、親しい者達の中にいる……?
とすると、兄弟関係の可能性が高いか。
名を尋ねるのが早いだろう。姓で確認する。
「おい、小者!」
「なんでそんなに偉そうなんだよっ!」
「そんな事はどーでもいいッス!!」
「へたしたらジンケンシンガイだよ!」
「どーでもいいッス!!」
「ねじふせないでよ!」
「さ、どうでもいい話題は置いといて……」
「どうでもいい連発しないでよ……」
本題に入る。
「貴様、中学生に兄弟はいるか?」
「え? いるけど……」
「貴様の名前は?」
小者は心底困惑した顔をした後、不満ありげな表情で私に突っかかって来た。
「人に名前聞くんなら、自分から名乗ってよ!」
「うっ、なんかカッコいいセリフッス……!」
仕方が無い、名乗ってやるとするか。
「我が名は魔神眼の使い手、辻村くみッス!!」
「え……っ?! く……み……?」
小者は私の『気』にあてられたのか、驚愕に堪えないといった表情で私を見た。
「さぁ……、貴様も名を名乗るがいい……!!」
小者は口をパクパクさせながら私に名を差し出した。
「おおしろ……、はるか……」
「え?」
まさかの小者は、『伝説の変人』候補……、大城みなおの弟であった。
変人物語は、なお、続く模様です。