コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 変人又は奇人(それと馬鹿)。《頑張るぜ!》 ( No.206 )
- 日時: 2014/08/22 11:56
- 名前: 目玉ヤロウ (ID: BKGAQbzV)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode=article&id=3011
4. 「勝つッス!!」
「最近、弟にフられた」
大城サンからその話を聞かされた時、私はどのような反応を返せば良いのか戸惑った。
「お、弟さんがいるんスか?」
「ああ、私に似た超絶美少年の弟だ」
「へぇ〜……」
大城サンのこういう所、本当に尊敬する。自分の事を何よりもわかっていて、堂々としていて……。 私の憧れだ。
「ぜひとも会ってみたいッス!」
「あぁ、惚れるなよ」
「クソガキ一匹に惚れ込むほど、私は落ちぶれちゃいないッスよ!」
「クソは付けるな。 トイレに流すべきだぞ」
「超絶下品なネタを堂々と使ってしまう大城サンも輝いているッスゥーッッ!!」
「汗じゃないか?」
あの時こそ、純粋に「会ってみたい」一心だったのだが……。
これが、大城サンの、弟さん?
吸い込まれるような、憂いを帯びた瞳、光のあたり具合で明るさの変わる茶髪、歩く時の腕の振れ幅、洗剤の香り……。クンカクンカ。
「言われてみれば、確かに似てるッスね……」
「おっさん? なにジロジロ見てんの? 超キモいよ」
「うっさいッス!!」
だが。どんな教育を受けたのかは知らないが、こいつ、ものすごくウザい。
特に『おっさん』を言う度の顔が超ウザい。
魔神眼のチカラで焼き払うことも出来るが……、あの大城サンが溺愛(?)している弟だ。無下には扱えない。
そのまま歩いて行くと、突然はるかが立ち止まった。私もなんとなく立ち止まる。……歩いて行ってしまってもよかったのに。
「あっ」
「……ん? どうしたッスか?」
そしてはるかは、左の小道から登場した少年を見つめた。
「みゆき!」
『みゆき』と呼ばれた少年は心底嫌そうな顔をしたかと思うと、一瞬立ち止まり、私とはるかを交互にみると更に顔をしかめてスタスタと歩き出そうとした。
「ちょっと待って! 一緒に行こうよっ!」
はるかは必死になって引き止めるが、みゆきはちょっと立ち止まるだけだった。
しかも、はるかに向かって嫌味たっぷり、私だったら掴みかからんばかりの言葉を述べたのだ。
「バカはもっと早く学校行って、勉強でもしてたら?」
イラッ。
このクソガキ……!!
別に、無視してもよかった。自分が言われたわけでもなかった。
でも、ムカムカした。
そして次の瞬間「調子乗ってんじゃねーッスよ!!」と突っ込んで行こうとした私を、慌ててはるかが遮った。
「う、うるさいよ、みゆきっ! それにおっさん?! 別にみゆきは、あんたに言ったんじゃないから、怒んないでよ!!」
「く……ッ」
「……ふんっ……」
……今の私は、確かに冷静さが欠けていた。
みゆきの方も何か言いたげな様子だったが、私同様、はるかの仲裁によって冷めたようだ。
3人が、はるかを真ん中にして歩き出して少し経つと、はるかが口を開いた。
「ちゃんとわかってるよ」
何かを決心したような、そんな声だった。
「次のテストで40点取れなかったら、ぼくは、みゆきの友達になるのを諦めるよ」
「……えっ?」
今、私の耳にとんでもない単語が聞こえて来たのだが、気のせいだろうか。
「ふん、まぁ、無理だろうがな」
「……えっ?!」
なんで無理なの?!
「ううん。 せっかく難易度下げてくれたんだから、ぼくだって何もしてないわけじゃないよ」
「……えぇっ?!」
40点、無理、難易度下げた、はるか。嘘だろおい。
「最近では、一日の勉強時間が20分に増えたからね」
「……そうか」
おい。
私にも理解できた。
大城はるか、侮れん。
「ぼくがバカじゃないってこと、証明して見せるよ!!」
こいつは。
常識人でも、馬鹿である。
「……はっ、それじゃあ無理だな。 やっぱり、バカは逆立ちしてもバカなんだな」
みゆきは口を歪めて、ニヤリと笑った。
そんなみゆきに、はるかは自信満々の表情で切り返す。
「『バカ』は逆立ちしたら……、『カバ』じゃんっ!!」
バカッスね。マジもんの。
「……せいぜいがんばるんだな」
みゆきの方も、脱色していた。
私も、「あぁもうこいつは手遅れなんだ」と悟ったのであった。
☆
が、事件は、コレで終わらなかった。
みゆきは最後にこう言い残して去って行ったのだ。
「んじゃ、バカ『2人』と絡んでると、こっちまでバカだと思われそうだし……、さようなら」
「まっ、また後で会うじゃん! まってよ、みゆ……っ、って、おっさん?! 顔が女子中学生のする表情じゃないよ?!」
……どんな顔だったかは知らない。
だが、この世で一番恐ろしいモノの顔なら知っている。
悪魔をも欺くなら、人間であれ。
「はるか」
魔神眼を開眼させ、私は魂を込めて叫んだ。
「絶対に、勝つッス!!」
「おっさん、近所メーワクだよ!!」
変人物語は、なお、続く模様です。