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Re: 変人又は奇人(それと馬鹿)。《頑張るぜ!》 ( No.207 )
日時: 2014/08/26 18:30
名前: 目玉ヤロウ (ID: BKGAQbzV)




5. 「強行突破だ」



「バカに勉強を教えてやってほしいッス」
「やだ」
「拒否権は無いッス」
「絶対やだ」
「人権も無いッス」
「人としてやだ」

朝の一件から、私は広い人脈を利用し、朝から手当たり次第に頭のイイ人間にアタックし続けていた。


「バカに勉強を教えてやってほしいッス」


ちなみに、現在は昼休み。
1人も首を縦に振ってくれない。


「お願いするッスー、コウ〜……」
「おれの人権を無下に扱う奴の頼みなんて知らん」
「コウに人権も何も無いッスよ……」
「さらっと酷いこと言った?」

今、私がロックオン中の人間は中村コウ。

いちいち余分な事を言うムカつく野郎だが、今は仕方がない。
こいつが秀でているモノの中に、『勉学』が含まれているのである。

勉強に人のよさなんてもんは含まれていない。

デリカシーの欠片も見当たらないような中村にも出来ることはあるんだ……。と、私は毎度感心させられる。

コウは目の前で「ケッ」とでも言いたげな表情を見せた。

「バカにはきっと、おれの説明理解できないよ」

こ、こいつ、ちょっと頭が良いからって……!
いや私もそんなこと言える立場じゃないんスけど……!!

「他をあたれよ」
「いやッス!」
「諦めれば?」
「断るッス!」
「……自分で教えてやれば?」
「無理ッス!!」
「……」

コウは呆れ顔でため息をついた。
その様子は、学年内でもかなり小柄の部類に含まれるコウが行うと、小学生が無理して大人ぶっている様にしか見えない。

「やーい小学生!」と言ってやりたいところだが、本人的にはかなり気にしているようだし、こちらは頼み事をしている訳であって。
それは……、それだけは、禁句だ。

「だいたい、何でおれにはそんなにしつこくつきまとうんだよ?」
「う……っ、そ、それは……」


『中村は押しに弱いから、ウザがられるくらいしつこくつきまとえ。 強行突破だ』


大城サンからの助言である。

今こそ、その助言を最大限に活かしている時なのだ!

「とっ、とーにーかーくーっ、バカに勉強を教えてやってくださいッス!!」
「えぇーっ……、そのバカって、どの程度のバカなんだ……?」
「テストで40点取るのが困難な程度ッス!」
「『程度ッス!』じゃないだろそれ……」
「頼むッスよぉー!!」

私が手を合わせて懇願ポーズを取ると、コウは「うぅん……」とうなり出した。


よし来たッ……!!


『うなり出したらあとは突き落とすまでだ』


大城サンの助言その2。
今こそ最大の『アレ』をかます時だ。

私はニッコリとコウに微笑みかけた。嫌みなほど、ニンマリと。


「あっるぇ〜? コウ君は小学生にお勉強教えることもできないッスかぁ?」

ヤツの表情筋が『ピキッ』とひきつる音が聞こえたと同時に、小さく「舐めんなよ」という声が聞こえた。


チョロい。


なかなか自分もゲスかったと思う。

コウの、少々ひねくれていて変なところで強気な性格上、迷っている最中にデカイ『挑発』をかまされると、確実に乗ってくることを大城サンは予測していたのだ。
くぅ〜っ、そこに痺れる憧れるぅ!!


私が大城サンに痺れて憧れていると、コウが私に向かって何かを問いかけて来た。

「……ところで」
「ん? なんッスか?」
「勿論お前も教えるんだよな? そのバカに」
「は?」

そして、「そんなワケ無いじゃ無いッスかぁ〜」と流そうとした私に、更なる追い討ちをかけてきたのだ。


「え? くみちゃんはおバカさんにお勉強教えることもできないのぉ?」

「……舐めんなッス」





15秒後、私はまんまとはめられたことを理解した。

「こっ、この……!!」
「ふふん、詰めが甘いな」

すっかり得意気な表情のコウが腹立たしい。

「でっ、でも、コウも引っ掛かったッスよね!?」
「あれは事故だ……」
「バリバリ目を逸らしてるじゃ無いッスか!!」
「目にゴミが……」
「苦しい言い訳ッスね!?」
「目が、目がぁぁあああああッッ!!」
「バルスッ!!」

くぅ……っ、悔しい。

「……まぁ、別にイイよ。 めんどくさいけど」
「おぉっ! ありがとッス!」

結局、コウは勉強を見てくれる事になった。





変人物語は、なお、続く模様です。