コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 変人又は奇人(それと馬鹿)。《頑張るぜ!》 ( No.209 )
- 日時: 2014/09/18 23:06
- 名前: 目玉ヤロウ (ID: qm6g63sI)
7. 「あ、全然違うね★」
私は気付いてしまった。
あのメンツで勉強会なんて、無謀にも程があったということに。
だが、私は同じ失敗はしない。日々精進するのだ。
昨日の勉強会は、あまり勉強せずに強制終了してしまったが、今日は違う。
「今回は、『強力な助っ人』を召喚しようと思うッス!」
「『強力な』が怪しすぎる!?」
「文句言うなッス!!」
そう、前回との違いは、助っ人の有無である。
「前回の反省点は、コウの力不足ッス」
「ち、ちょっと待てぇぇぇいッッ!?」
「なんなんスか、いちいち言葉を挟むなッス……」
「おれのせいじゃ無かったよなアレ?!」
「自らの過ちを認めないとは、なかなか往生際の悪い奴ッスね」
「いやいや、どう考えたって過ってないだろが!」
「と、言うことで、『ドキドキ喆放課後のお勉強会についての変更点だよッ☆in昼休み』は終了ッス!」
「話聞けよ!?」
「じゃあ、大城サンによろしくッスーッ☆」
「図々しい!?」
最後までコウはブチブチと文句をほざいていたが、私には関係の無いことだ。己の本能に従い、私は全部聞き流しておいた。
☆
あ……。そういえば、一番肝心だと思われる箇所を伝えるのを忘れていた。
助っ人の名を。
結構大切な部分だったのだが、忘れてしまったことは仕方がない。
所詮は、忘れてしまう程度の情報だったと言うことだ。
それに、その『強力な助っ人』とコウは、仲が良いはずである。
『強力な助っ人』も、「コウがいるなら行く」的な事を言っていたのだ。2人は余程仲が良いのだろう。そう信じよう。
男同士、熱い勉強会にしてくれるはずだ。
☆
迎えた放課後勉強会は、まるで拷問中の如く殺戮とした雰囲気を醸し出していた。
はるかは、産まれたての小鹿よろしくプルプル震えながらもノートを広げてはいるが、ガタガタ震える指で鉛筆の持てる状態を保つのに必死なようすである。
コウと大城サンは、小鹿を見守る親鹿の眼差しをはるかに向けつつ、自分たちのやりたいことを自由に行っていたが。
そんな中、足を組みながら教卓に座っている男子生徒だけが、教室内にケタケタと愉快そうな笑い声を響かせる。
「あれぇ、なんで分かんないのかなぁ〜? せっかく簡単な問題にしてあげたのにぃ?」
その男子は教卓の上で、小学5年生の算数の教科書をペラペラめくりながら、完璧に人をバカにするような態度全開で黒い微笑みを浮かべると、ゆっくりと足を組み換えた。
「うっ、うるさいうるさいっ!! まだ考え中……っ!!」
「あ、そう?」
「うぐぐぅ……っ!!」
はるかが悔しげに唸る様子を見て、男子は更に愉快そうな顔になる。
「まぁ、自分でやんないと意味無いもんねぇ?」
「う……っ!!」
「『この愚図を助けてくださいはづき様』、で一問で〜す★」
「いっ、言わないっ!!」
「でも、一問間違えたら腕立て10回だよ〜?」
「自分でがんばるしっ!!」
「ふぅ〜ん」
そして、更に笑みを深めるのであった。
「はづき……、さすがにはるかが可哀想だろ……、素直に教えてやろうよ……?」
その様子を見ていたコウが、ついに見るに耐えなくなったのか、しぶしぶ……、といった様子で教卓上の男子に向かって声をかけると、男子は当然のようにこう言い放った。
「そんな生ぬるい事、俺がやると思うぅ?」
後藤はづき。
それが、教卓上へ君臨している男子生徒の名前だった。
実を言うと、私は彼とあまり話した事が無いため、彼の詳しい人柄などはよくわからない。
だが、2年もここの学園に通っていれば、日々の会話などから、彼についての話を多少耳に挟むことはあった。
彼についての話題で1番多かったのは、はづきのドサディストっぷりについてだ。
ドサディスト、つまりはドSのことだが、はづきは普段の学園生活内でもその性格を露にしていた。
軽く噂話のネタになるくらいに。
人の嫌がる事を嬉々として行い、人が苦しむ姿を見て快楽を覚え、彼は常に、悪魔よりも悪魔らしい微笑みを絶やさずにいるのである。
端から見れば恐ろしい性癖を持った嫌われ者としか感じられないはづき。
ところがどっこい、彼はなかなかモテる側の人間なのである。
人よりも整った目鼻立ちに、バスケ部1年スタメンと言う肩書きのもと、運動神経は抜群。勉強も完璧。性格にさえ目を瞑れば後は完璧人間。
そんな彼は、女子から意外に人気だったりするのだ。
……私の好みでは無いが。
「わかったぁぁああああああッッ!!」
突如、はるかが鉛筆を、バンッ、と、開いたノートの上に叩きつける音が聞こえた。
「マジッスかっ!?」
「あ、全然違うね★」
「くっそぉぉおおおおおおッッ!!」
絶望したはるかが、椅子からずり落ち、その勢いで床と衝突した頭を抱えながら悶絶する様子を見て、はづきはいきなり、吹き出すや否やゲラゲラと笑いだした。
もうこいつらダメだ。
人としてダメだ。
私は強く、そう思った。
「はは……、まぁまぁはるか君、落ち着いて考えればこんな問題、猿でもできるんだよ?」
しかし。
驚くべき事に、はづきはしばらくして落ち着いたのか、いつも通りの黒笑みに戻り、なんと真面目に解説を始めたのである。
「ふぇ……っ?」
「ほら、仕方ないから教えてやるよ」
これにはさすがの私も少し驚いた。
もしかしたら、こいつ、意外に世話好きだったりして……。
これならば軌道に乗れるかもしれない!!
放課後勉強会が、初めて一歩前進したような気がした。
変人物語は、なお、続く模様です。