コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 6年生少年少女 テスト編 1 ( No.27 )
日時: 2014/01/07 22:45
名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)




14話



「おい、モブ谷」
「だから僕の名前は『沢谷ゆう』だと言っているでしょう…」
「はァ?キサマがモブ面してるからそう呼ばれるんだ」
「どう見ても大城さんが広めてましたよね?!いろんな人に!浸透しちゃったじゃないですか!!」
「皆、否定はしなかったぞ」
「なんですかソレ?!新手のいじめですか?!」
「違う、遊びだ」
「物凄い悪質な遊びにしかみえませんが?!」
「だろう?モブ谷もそう思うか?」
「被害者に質問してどうするんですかっ!!」

みなおの隣の席に座っているのは、読書中だった沢谷——モブ谷ゆうだ。

「言い直す必要ありませんよ!!」

ナレーターにまで突っ込んでくる、常識人中の『常識人』、モブ中の『モブ』とは、こいつのことである。
こいつは成績がすこぶる良く、いつも学年首位のインテリ眼鏡やろうなのに、自己主張できずにいるため影が薄い。そしてヘタレ。

ちなみに『成績が良い』と書いたが、こいつの『良い』は神童級だ。

ヘタレだのモブ谷だの散々の言われようだが、彼は、この学園の『普通コース(以下略)』で合格した頭を持っている。
なのに影が薄い。なぜなのだろうか。

「ふぅ…大城さんも、少しは復習したらどうですか?来週は県の定着度調査があるんですよ?」
「…復讐……いや、このネタはベタか………まぁ、テストなんてなんとかなるだろう」
「軽いです!!そしてベタなネタを避けましたね?!」
「ちっ、聞かれちまったか…!」
「……はぁ、なんなんですかー、そのとっておきみたいな感じ?」
「あ?お前には関係ないことだろう?」
「いやいやいや、関係ありげなこと言っといてそりゃないですよ!」

モブ谷は呆れたように肩をすくめた。

「…全国学力テストで静岡県が最下位になってしまった件が、僕は悔しいんです。だから、がんばって、今回は上位に食い込めるようにしようと——」
「あ、次の授業始まる」
「せめて最後まで聞きましょうよっっ!!」

みなおとまともに会話できる人間がいるとすれば——。

その人間も変人なのであろう。





授業が終わると、珍しくみなおが、自分で教室から姿を消した。
そして、ユリとリナとくみをそれぞれの教室から呼び出すと、廊下の隅の方で話し出した。

「モブ谷のやつ、今回の定着度も本気で挑むらしいぞ」
「えぇっ、モブ谷がまたやる気出してんの?」
「先程の休み時間に聞いたからな」
「やばいッスね、モブ谷さん…!何事も全力でやり抜いて!!」
「……あなた達、モブ谷を話題に、何を話しているの?」

みなおが自分から動き出すなんて滅多にないことだったため、3人は驚きを隠せなかった。
が、あんまり大した用件では無かったようで、3人とも脱力してしまう。

「定着度ねー、うち、なぁんにも勉強してないからなぁーっ」
「そうッスねー、私は何事も、その場その場で全力ッスから、準備はしたことないッスねー」
「だめじゃん!ですわ!」
「本当にダメだったら奥の手を使うッス!」
「くみがよく使用する魔神眼とやらか?」
「うーん、それもあるかもしれないッスけど…」
「けど、何よ?」
「やっぱ一番手っ取り早いのは、カンニン——」
「駄目よ!!そんな汚い手絶対使っちゃッッ!!」
「ん?手は洗えばキレイになるから大丈夫ッスよ!」
「そーゆー意味じゃねーですわぁァっっッ!!」
「モブ谷いるから楽ショーだわぁーっ」
「うわーいいなぁ、うちの席と変わってぇぇーっ!」
「もうッッッ!!3人ともっ!そういうのは自分の力でやるものよ!」

その後もあっというまに休み時間は過ぎて、4人は各自教室へ戻って行った。





3組に帰ってきたリナは、自習(なぜか都合良く先生が出張してる)のとき、パプキにそのことを話した。

「——って話をさっきしてたんだけど」
「リナ、カンニング、絶対、ダメ」
「たははーっ、わかってるよパー君っ!」
「なぁーに話してんの?」
「うわぁっ!はづがいきなり!」
「いきなりなんて登場してないよ。君、目玉が機能してないんじゃないの?」
「はづき、席、着ク」
「だいじょーぶだよ、パー君。席について大人しくしてろなんて、誰にも言われてないんだから★」

その途中で、はづきも加わり3人で話し出す。中村は昼寝の時間のため眠っているから、会話での出番はなし。

「モブ谷くんが今回も本気を出す…、ねぇ」
「はづ、聞いてたの?」

「まぁね」と、はづきは裏のありそうな顔で微笑んだ。その表情からは、誰かさんみたいに、なにも読み取ることができない。

幼馴染みの人間以外には、の話だが。

「…はづ、どう思う?」
「どうって?」
「モブ谷、また1番になるのかなぁ」
「さぁ、そうなんじゃないの?」
「………じゃあ、さ」

リナはニヤリと笑い、新しいパッキーを口にくわえた。

何かを察したパプキは、少し驚いたように「リナ、まさか」と言うが、リナはお構い無しに言葉を続けて行く。

「もしかして、1位のイスを誰かに奪われちゃったりしたら、すごい傷ついちゃうのかもぉ……」

リナとはづきの間に、目線による謎のやり取りが繰り広げられる。

「そのときモブ谷、どんな『顔』するんだろうねっ☆」


それを聞いたはづきが、不気味に口の端をつり上げ、話し出した。




「早速、自習を始めよう★」





モブ谷くん、逃げて!!
続く………。