コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 6年生少年少女 テスト編 2 ( No.30 )
- 日時: 2014/01/08 20:24
- 名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)
15話
はづきがいきなり真面目に勉強を始め出した。
いつも真面目に努力する者を嘲笑しまくってるような奴が、だ。
鉛筆を走らせつつ、口元が不気味ににやけているため、結構気味が悪い。
中村は、なにかを企んでいる感が見え見えの幼馴染みを、汚物を哀れみの混じった表情で見つめているような顔で見つめた。
(あいつ…まさかトップ取るつもりなんじゃ……)
その、まさかであった。
☆
後藤はづきは、幼馴染みの者でさえも知らないことや、謎の多い人物だ。
現在、兄と二人暮らしをしている、ということまではわかっているのだが、両親のことについては一切明らかになっていない。
彼が、人の苦しむ姿を見ることに快感を覚えるようになった時期も、いまいち不鮮明だ。
だが、確実に言えることがある。
彼もまた、天才と言う種類に分別される人間であること。
これだけは確かだ。
☆
「あぁーあ、大がかりな嫌がらせのために、ここまで苦労しないといけないとはねぇー………ほい、完了」
「はづき、計算、早い」
「んー?はづき、もう終わっ……あれ…?もしかしてオレ、一番遅いの…?!」
「うん。おれも今終わった」
「え?コウもはやいな!!俺様もはやく終わらせたいなっ!」
「どーしよう…!この中でツッコミ役が一番馬鹿って…最悪じゃんッッ!!」
「べらべらと汚い鳴き声発してないでさぁ、ラノもさっさと終わらせろ★」
「あ、はいごめんなさい…」
パプキと強の自宅である高級マンション1階。
男子たちは集まって、『猿並み以下のクズでもわかる勉強会…取り合えずお茶くれない?ってかラノ、うるさいよ』を始めた(命名、はづきと中村)。
いつもならパプキと強しか座ることのない4人用のテーブルに、5人も座れないことで少しもめたが、最終的にはづきの「ところで最近取ったテストの点数、最低点はなんだった?」という一言で、ラノが床(座布団のオマケ付き)に座ることになった。
そうだ……この世界は…残酷なんだ
自重することにする。
「『そして…とても美しい』………ふ」
「あ、中村さん、今の気持ち悪いニジオタっぷり、録音しといたから」
「ごめんなさいお願いですから消してくださいお願いしますはづきさんごめんなさいぃぃっっ」
「…まぁ、毎晩これ聞きながら楽しーく眠らせていただくとするかなぁっ★」
「はづき、顔、顔!!別人だよっっ?!」
「ゲスの、キワミ」
「ちょっとそのネタは古いぞ、ぱー!」
女子達とあんまり変わらないような会話をしながら、ちゃくちゃくと宿題やら自主勉やら漫画を読むやらしているうちに、あっと言う間に日は暮れて行った。
自主勉ノートを文字で埋めている途中だったはづきは、ふと自身の腕時計に目を落とし、「あぁ、もうこんな時間じゃん」と呟くと 、片付けを始めた。
「はづき、帰る?」
「えぇっ、もう帰っちゃうのか?」
「もうそろそろ家に帰らないと、うちのバカ兄貴が無駄に心配して警察に届けるかもしんないじゃん」
「ソウ、なら、帰る」
「おれも帰ろーかな……」
「あれ?コウ、お姉ちゃんに会って行かないの?」
「……カナは多分、無理矢理でもおれを家に泊めようとして来るし…」
「ヒューヒュー、仲良し姉弟さん★」
「なんだ、仲良し兄弟君」
「……………………………………仲良くねーし……ってか、あんまり調子乗りすぎると、いくら中村さんでも…」
「今日はおじゃまして悪かったな。また遊ぼ」
「じゃーなッッ!中村と、はづき!!」
「また、来て、ね」
手をブンブン振る強と、ボーッとしながら見送るパプキを背に、ブラコンの兄、姉を持つ2人は、それぞれの家に帰って行った。
「…さてと!夕飯のしたくしよーっと……って、あれっ?ラノは帰んないのか?中村もはづきも帰っちゃったぞ?」
床に座り、下を向いたまま、ラノは微動だにしない。
「最ちゃん…パー君……」
「どっ、どうしたんだ?!お腹、痛いのか?!」
「ラノ、どうか、シタ?」
「オレ…宿題終わってない…!」
「は、な、なんだって?!」
「それなら、まだ、間に合ウ、早く、やる」
「そうすることができたら、もうやってるよ……!」
「!?」
俯いたまんま、ラノは涙混じりに呟く。
「下向きすぎてて、首が前を向けないんだぁぁ…っ!!」
「とりあえず、俺様は買い物に行ってくるからな、よろしく、ぱー」
「わかった、気を付けて」
「そこはスルーしないでほしかったぁぁぁっっ!!」
☆
「やったぁ!!ついに終わったぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ラノ、静かに、近所、メイワク」
「はは、ごめんごめん…」
数分後、なんとか首を回すことができるようになったラノは、あり得ないスピードで算数問題を解き明かして行った。ほとんど間違っていて追試ものだったが、追試の方が、宿題を提出せずに怒られるよりも良いというのが、ラノの考え方だ。良い子は真似してはいけない。悪い子でも、だ。
「なら、ご飯、待つ」
「えっ、悪いよ、さすがにソコまでは…」
「いい、最ちゃん、きっと、ラノの分も、いっしょに、作る」
「…まぁいっか!マンション一緒だしね!」
そうして、ラノとパプキは、しばらくとりとめのない会話をして強を待った。
続く……。