コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 6年生少年 1 ( No.5 )
- 日時: 2014/02/12 21:19
- 名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)
4話
中村コウは、かなり嫌な奴だ。
現在進行形で、メチャクチャ嫌な奴なのである。
丁度良い長さに伸ばされた黒髪、目付きは悪く、三白眼。
彼は、5年生のころ、まるまる1年停学するということをしでかした。
表向きでは、立て続けに暴力沙汰を起こした、という噂が流れている。
彼がなぜ嫌な奴なのかというと——。
あぁ、皆は何か勘違いをしているのではないだろうか。
暴力沙汰を起こした、のところで、強面の恐ろしい男を想像したのだろうか。
彼は、少し違う。
小柄なのだ。
同級生の6年生に比べ、小柄な彼は、自らの身長にコンプレックスを抱いている。パッと見では、4年生に見えるほどだ。
そして、嫌いな食べ物はトマトであり、トマトを見るだけで我を失うほどのトマト嫌い。
しかし、騙されてはいけない。
彼がなぜ嫌な奴だと言われているかを、まだ説明していない。
彼は、人として最低な奴なのだ。
自分の容姿を上手く利用し、穢れを知らない純な少年の演技で人を騙し、フルボッコにしたこともあったくらいだ。
自分から「得をする容姿で生まれてきてよかった」とか平気で言うものだから、「最低だなアイツ…」の称号が付いても、文句は言えなかったらしい。が、中村本人「最高の褒め言葉をありがとう(笑)」とのことで、みとめているようなのだが。
☆
「中村さーん」
「さようなら」
「ちょっ…ヒドッ?!」
「お前の顔が?」
「いやいやいやー、オレの顔のことじゃないよ」
「……」
「…無視はいけないよ?中村さん」
昼休み、6年3組の教室内、窓際一列目でうとうと眠りそうになっていた中村に話しかけてきたのは、後藤はづきであった。彼の趣味は人の苦しむ顔を見ることで、中村とは幼稚園年少の頃からの付き合いのため、比較的に仲は良いように見えるが、かなり一方的のようだ。
「…あんまりうるさい引っこ抜くぞ」
「だぁーかーらぁー、これはアホ毛とかじゃなくって、よくわかんないけど『みょんみょん』する、変なものだっていってるじゃん」
はづきは頭に『みょんみょん』というものがあり、彼が喜んだりすると、その名の通りみょんみょんするのであった。
彼はよくコレをみょんみょんさせて遊ぶことが多いのだが、遊び方が、まずおかしい。その内容は『人をいじめる、もしくはいじる』という、彼の趣味である、人の苦しむ姿を見ることに繋がる内容なのだ。
「まぁまぁ、中村さん。普通にひっこぬくだけじゃつまらないでしょ?なんなら、みょんみょんしてる間、引っこ抜いてみるのはどう?」
「……遠慮しとく」
「そんなこといわずにさー……。拒否するなら、カナちゃんさんから貰った、『コウの成長記録〜part 1〜』から、中村さんの写真を一枚ずつクラスのみんなに公表していっちゃうよ?」
「そ、そんなもんを交換していたのかお前?!」
みるみるうちに、中村の顔は真っ赤になっていった。中村には、究極の弟好きである、現在高等部1年生である姉、中村カナがいる。カナは、何の間違いがあったのか、はづきと意気投合してしまい、中村の写真を焼き増ししたものを交換しあったりしているのだ。
「なら、遊んでくれる?」
ニヤリ、と黒い笑みを浮かべたはづきは、立ち上がり、元から椅子に座っていた中村を見下すようにして、机を挟み向かい合うよな姿勢をとった。
「……うぐぐ」
中村は完全に不利な状態になってしまい、困ったような、怒ったような顔をして、「いいよ」と言った。
「じゃあまずはみょんみょんさせるために、中村さんに苦しんでもらお……」
「結局お前はおれをいじりたいだけかッッ!」
ドドドドSの少年、後藤はづき。
最低な人間であり、はづきと姉に弱味を握られた少年、中村コウ。
二人は本当の友情を見つけるため、奮闘する。
青春疾走物語——、開幕…………。
「しない、自分、登場、してない」
変人物語は、なお、続く模様です。