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Re: 6年生少年少女 再会編 1 ( No.69 )
日時: 2014/01/27 17:48
名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)



18話



昼休みだ。

(今日は掃除がある日か…、どうやってサボろうか?)

大城みなおは、自分の机を教室の前に寄せている途中、ずっと『どのようにすれば皆からの当たりもほどほどに掃除をサボることができるのか』について考え続けていた。

(『なんとなく』…これでいいような気もするが…)

机を運び終えると、同じく後ろで机を運ぶ人に迷惑がかからないよう、みなおはするりと、机と机の間から抜ける。

(『持病が悪化した』…持病と言っても、喘息だもんなぁ…)

全机が教室前に集結すると、教室後ろのスペースが広くなる。つまりは掃除がしやすくなるということだ。後ろのスぺースの掃除が終われば机を前に移動し、前のスペースを掃除する。これが、教室掃除の流れである。

みなおの担当は、初等部第二理科室なのだが。

(…なんかもういいや、めんどくさい。昼休みを満喫することにするかな)

みなおはすたすたと、廊下へ出ていった。





「あっ、いたいた!大城さーん!!」

手をブンブン振りながら数メートル先で明るい笑顔を振り撒いているのは、辻村くみだった。みなおを見つけると、ものすごい勢いで全力突進してきて、衝突寸前ギリギリのところで「おっと!」とかいいながら急停止した。

「よう、くみ。君も暇なのか?私は暇するのに忙しいくらいだぞ」
「まったく忙しそうに見えないッスけど、大城さんの中では『暇』な時間をつくる事さえも忙しいくらい、日々が充実している、って事ッスね!!大城さんマジ強者ッス!!」
「やっぱり?くみもそう思うか?」
「自分で認めてるところも含めて強者ッスね!!」

本日もテンションの変わらない2人は、やはりいつもと変わらない様子で会話をしていた。

「お、あんなところに冴えない顔をした岡本がいるぞ」
「惨めに牛乳の脱け殻洗ってたら、あんな顔にもなるッスよ…」
「冴えない顔って、どういうことですの?!」

水道の近くで、給食に登場した牛乳の脱け殻(牛乳パック)を、本気で嫌そうな顔をしながら洗っていた岡本ユリは、みなおが自分の表情について『冴えない顔』と表現したのがよほど気に入らなかったらしく、いきなり鋭いツッコミを入れた。

「岡本よ、怒ると寿命が縮まるという話、よく聞かないか?」
「本人も知らない間に、生命が蝕まれているんスね」
「あなたたちと話しているから腹が立つのよっ!!今日は委員会もありますし、お喋りはまた今度にしましょう!?……っていうかコレ、クセーんだよっ!ですわっっ!!」
「牛乳パックが新しいお友達なのか」
「牛乳の脱け殻と心を通わせて……」
「もう…この続きは、本当にまた後でお話しますわっ、もしくはお聞きして差し上げます!!さようなら……だからクセーんだよっ!牛乳テメェッッ!ですわっっ!」

1人で楽しそうな岡本はスルーしながら、みなおとくみは、もう既に、3組の方へ歩き出していたのだった。





3組では、ほとんどの生徒が外へ出ていってしまったらしく、残っていたのはごくわずかなな人数だった。

——問題児たちは、当然のように教室に君臨していたのだが。

「おじゃましましまうす」
「たのも————————ッス!!」
「おぉっ!大城とくみ!!」
「…うるさい奴らが来たな」
「来たねー、うるさい奴等」

ニコニコした笑顔で迎えてくれたのは高柳リナ、大変迷惑そうにしているのは中村コウ、ニヤニヤした笑顔で歓迎しているとも迷惑がっているとも言えるような表情なのは、後藤はづきだった。
3人とも、窓際でなにかの作業をしているようで、リナ、はづき、中村の順で並んで屈んでいた。

「なにしてるッスか?」
「1、2、3年生の頃のアルバムを見てるんだ〜っ、ほら、うちたち3人、幼馴染みでしょっ?懐かしいよ!」
「特に俺は中村さん目当てで〜」
「…焼き増しとか言うなよ?気持ち悪いから」
「あっ、この写真焼き増しお願い★」
「……きも」

3人の幼馴染みの会話に、なかなか2人は加わることができない。その様子に、リナは慌てて『あること』を思い出した。

「……あっ!2人は転校生だったか…」
「いえいえ〜っ、気ぃ遣わなくていいッスよ、リナ鳥さんっ!」
「あははは〜っ、そう?ならいっしょに見よっ!」
「ありがとッス!!私も今度、アルバム持ってくるッス」
「おぉうっ!楽しみだっ!」

なんとかくみを取り込むことに成功したリナは、みなおにも声をかけた。

「大城も、見る?」

みなおは頷いて、写真に目を落とす。

笑い合いながら、走り回っている様子の写真。
すっ転んだ1人を、心配している様子の写真。
夏祭り、1人が迷子になってしまったようで、皆が探している様子の写真。


ふっと、幼い頃の風景が、みなおの頭の中に浮かんだ。

涙目になりながら逃げ回る、自分によく似た少女と、それを追いかけ回す少年。黒い長髪の少女は、その様子を見て呆れ果てているのかもしれない。


自然に溜め息が出た。


(もう一生巡り会うことがないかと思うと、なんか嬉しいな)

昼休みはまだ、30分ほど残っている。

(もう消えてくれてもいいだろう?)

みなおはあくびをして、また、リナ達の写真に目をやる。

(なぁ?『たく』……)





いきなり長い1話目だけど、続く…。