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Re: 6年生少年少女 再会編 4 ( No.95 )
日時: 2014/02/07 17:11
名前: 目玉ヤロウ (ID: QQsoW2Jf)



21話



「なっ……!?なんなんスかっ、あの人間は!!」
「いや…くみも人間だから…」
「コウは黙るッス!!」
「……」

中村は、わざと大きな溜め息をついてから、静かになった。

「…んっ?そこにいる黄金色の髪の女の子は、みなおの知り合いなのかい?」

白元に肩を掴まれたままのたくは、綺麗な色をした黒い瞳に、星を散りばめたかのような輝きを宿した。
肝心の白元は、すでに放心状態となっていて、虚ろな目をしながら——たくの肩は掴んだまま——脱色していた。

「……『友人』、な」
「はははっ、そうか!道理で可愛いと思った〜!僕のお嫁さんに迎えてあげなくちゃねっ」
「こっ、断るッス!!私には心に決めた人が………いる…ッス……っ!!」
「うぅーん…それなら仕方ないね。僕は世界中の女の子の幸せを願ってるから…無理に、とは言わないよっ!」

真っ赤になってしまったくみを見て、たくは無駄に爽やかに微笑んだ。
そして、くるり、と、たくの突然の登場に驚きすぎて、白元同様放心状態にリナへ体を向けた。

「そこの可愛らしい顔の女の子も、みなおの『友人』なんだね!」
「……………………ハッ!!……って、えっ、うっ、うち!?」

石化が解けたリナは、慌てながらも目の前の学ラン爽やか少年、たくに焦点を合わせる。その様子を確認して、またもやたくは、無駄な爽やか笑顔になった。

「僕のお嫁さんに……」
「ならんっっ!!」

初対面の女子に同じようなパターンでナンパし続けた、たく。
結局恋が実ることはなかった。

ずいぶんとアホな発言の多い彼だが、心の底から考えていることをそのままストレートに伝えただけなのだ。 それほどまでに、彼は『女の子』が大好きなのであった。

そんなたくに、初めて自分から話しかけた者がいた。

「あのさぁ〜、俺、君の名前聞いてないんだけど…。っていうか、自己紹介、できるの?」

はづきは相変わらず飄々とした雰囲気を醸し出しながら、初対面のたくに向かって挑戦的に、自己紹介するよう促した。これは、はづきなりの挨拶なのである。多分。

「おっと!自分の名前は先に名乗るべきだったね、ごめんごめん」

爽やかな笑顔に、少し困ったような表情を足したような顔をしながら、たくは自己紹介を開始した。

いや、しようとしたところに、邪魔が入ってしまった。

「僕の名前は佐々木たくと申します!好きなのは女の子で……」
「……おいお前、また同じ事を繰り返すつもりか…?」

ついさっきまで脱色していた教師、白元が、今、我に返ったのだ。
ギロリとたくを睨み付ける白元。
たくは、みなおとの再会と、その『友人』である女子の登場によるためなのか、白元に肩を掴まれていたことをすっかり忘れていたようで、驚いて目を見開いた。
…いや、完全に頭から白元に関する記憶が抜け落ちていたらしく、まるで、初対面の人間が突然殴りかかってきたときにするような顔で、白元を見上げていた。

「…ぼ、僕を追いかけてきた先生っ!!」
「…俺の名前は白元だ…いや、そこは別にどうでもいい……。とりあえず、校長室に来い」
「いやですっ!!そもそも、なんで僕が校長室へ行かなきゃいけないんですかっっ!?」
「あ……?『なんで』、だと…?そんなもん、決まってんじゃねーか…。大体テメェは——」

白元が、簡潔に『意地でも校長室に行かなければならない理由』をたくに説明しようとした丁度その時——。


ピーンポーン。


場違いなほどに明るい、玄関チャイムの音が学園内に響き渡った後、素晴らしいタイミングで『教員は話し合いがあるため、直ちに職員室集合』という放送が入った。

「……………」
「あの、しろとも先生…?」
「…………俺の名前は白元だと言っただろ……」
「あっすっ、すみません!しろもと、先生!」
「……………」

深い溜め息をついた後、白元は眉間に皺を寄せながら、たく、みなお、リナ、くみ、はづき、中村、の6人を見た。

「 ……これ以上変なことをしなければ、校長室行きは免除してやる……だが、昼休みはあと20分程度だ…。掃除には間に合うように過ごせ。他校生のクソガキ……佐々木もな」

そう言い捨てると、いつも通りの怖い顔で、職員室へ向かって行った。





(…………?)

職員室に向かう途中、長い階段を下りていると、白元はなにか強烈な違和感を覚えて、歩く速度を落とした。

(…そういえばさっき、なにかがおかしかった気がするんだが……?)

すぐに思い出せそうなのに、当たり前すぎて気がつかないのであろうか。
それほどに、その『なにか』は、この学園での非日常に貢献していたものだったはずなのだ。

(………なにがおかしかったんだ?…元からの調子と…今日は、違ったのか…?)

白元の頭の中に、先程の教室内での流れがフラッシュバックされる。

爽やかに、笑顔を振り撒いていた、たく。
くみに黙れと言われて、静かにしていた、中村。
ニヤニヤしながら、たくの様子を観察していた、はづき。
たくの登場に驚き、硬直していた、リナ。
いつもと変わらない様子だった、くみ。
たくとの再会によるものなのか、ずっと強張った表情のままだった、みなお。

——強張った表情の、みなお?


職員室入り口の前に立ったとき、白元はやっと『おかしい』部分を思い出すことができた。


(……大城の茶々が、入らなかった?)


いつもなら、誰かが会話しているとき、必ずと言っていいほど変な茶々を入れてくるみなおが、ずっと黙ったままだったのだ。




シリアス展開に、期待しないようにしましょう。続きます。