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- Re: 輪廻転生——時を越えた奇跡——【1/22更新】 ( No.13 )
- 日時: 2014/01/28 22:31
- 名前: 緑茶 ◆hjAE94JkIU (ID: D6FduTwT)
*5*
春の暖かい日差しは、あっという間に夏のギラギラとしたものへ変わった。早いことに、もうすぐ夏休みだ。
あれから桜とは、あの公園で時々会って話をした。その話の中で桜は、僕とは学区が違う為、隣の中学校に通っている事が分かった。道理で学校で見かけなかった訳だ。
他にも他愛の無い話をするのだが、僕はそれが楽しくて仕方がなかった。
いつの間にか公園には『バスケの練習に行く』のではなく『桜と話をして、ついでにバスケの練習をする』と目的が変わってしまうほど、桜と会って話をするのが楽しかった。
会いたい。少しでも声を聴きたい。
特定の誰かにそんな想いを抱いたことの無い僕は、この気持ちが良く分からなかった。
*
「よっしゃ〜!! やって来たぜ、夏休み!! 遊ぶぞ!」
「宿題あるし部活もあるから、遊べる日なんて一日も無いと思うけど?」
「そんなこと言うなよ〜」
終業式が終わって浮かれている燐を、いつものようにたしなめた僕は着替えの準備をする。
「燐も早く着替えろよ。部活遅れるぞ」
「……終業式の日ぐらい休ませてくれないのかなぁ」
「無理じゃないか?」
「だよなぁ。はぁ……」
燐は練習前には決まって『休みたい』とか『だるい』とか愚痴を言うが、いざ始まると練習はきっちりとこなすし、実力もあるのだから、初めて燐のプレイを見た時は驚いた。それを言うと調子に乗りそうなので言っていないが。
着替え終わって教室から出ると、廊下でばったりと檜扇さんに会った。
「あ、檜扇さん」
「桔川君に堂本君。早くしないと部活遅れちゃうよ?」
「へーい。行こうぜ、梗」
「ああ。……檜扇さんも早くしないと……」
「あたしは先生に呼ばれているの。話が終わったらすぐに行くよ」
「そっか。引き止めちゃってごめん」
「ううん、平気だよ。……それより後十五分で部活始まるけど」
「やべぇ!! 梗、急ぐぞ!!」
体育館までそれほど距離は無いが、ボール等の準備をしなければならない。
僕は燐と共に廊下を猛スピードで走り抜けた。だから
「…………」
檜扇さんがじっとこちらを見ていることに気が付かなかった。
*
部活の準備にはギリギリ間に合い、僕達はいつも通り部活を始めた。いつもより部活の時間は長かったのだが、動いたのはいつもの練習程度だった。何故なら——
「集合!!」
柳部長の掛け声で、皆は素早く集まった。
「これから夏休みの予定について話す。……檜扇、プリントを頼む」
「はい」
檜扇さんがてきぱきとプリントを配っていく。配られた人から順に目を通していった。
「七月二十九日から八月四日まで夏の大会がある。負けたら終わりのトーナメント制で、この大会が終わったら三年生は引退だ。いつも以上に気合いを入れて行こう。何か質問はあるか? ……無いなら今日はこれまで。解散!!」
「お疲れ様でした!!」
挨拶を済ませて帰りの準備を始める。片付けや掃除は当番制で、一週間で交代する。今週は僕の当番ではなかったので、さっさと準備を終わらせた。
当番に当たっていた燐に挨拶をして体育館を出たところで
「桔川君!!」
「……檜扇さん。どうかした?」
檜扇さんに呼び止められた。
「えっと……少し時間ある? 話したい事があるんだけど……」
「大丈夫だよ。何?」
「あ、あのね……」
「うん」
「え〜っと……」
「…………」
少しの間目を泳がせていた檜扇さんは、何かを決意したように大きく深呼吸をし、僕ときっちり目を合わせて言った。
「桔川君。……私はあなたのことが好きです。付き合って下さい!」
夏の夕日の中に立っている檜扇さんの顔は、今まで見たどの顔より赤く赤く染まっていた。