コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 輪廻転生——時を越えた奇跡—— ( No.2 )
- 日時: 2014/01/14 19:34
- 名前: 緑茶 ◆hjAE94JkIU (ID: RJ0P0aGF)
*1*
「ひっく……ぐすっ……ママ……パパ……!」
「……どうしたの?」
「ママたちのところに、かえれなくなっちゃった……」
「そっか……じゃあ、お姉ちゃんが連れていってあげる!」
「……ほんと?」
「うん! お名前、教えてくれるかな?」
「……キョウ」
「キョウ君って言うんだ。よろしくね!!」
「お姉ちゃんは?」
「私? 私の名前は——」
そこで世界が暗転した。
*
「〜〜〜〜〜っ!!」
背中に衝撃が走った。痛みで目を開けると、飛び込んできたのはまだ見馴れない天井。耳に入るのは、騒がしい目覚ましの音。そこで、やっと自分がベッドから落ちて目を覚ました事を理解した。
「なんだ、夢か……ふぁ〜〜」
立ち上がり目覚ましを止め、大きなあくびをした僕——桔川梗は、スウェットから洋服へと着替え、ボサボサの髪をとかして、朝食を取りにリビングに向かった。
すると朝食の準備をしていた母さんと目が合った。
「おはよう、梗」
「おはよう、母さん」
「春休みだからってダラダラしすぎよ。もう少し早く起きなさい。もうすぐ中学生なんだからね!」
「うん。分かってるけど……ポカポカして気持ち良かったから……」
「確かに天気が良くて、お洗濯日和だけど……明日は早く起きるのよ」
「努力する。いただきます」
——少し暖かくなり始めた三月の中旬、僕は小学校を卒業し、今は中学に入学する前の春休み中。取り立ててやることも無いので基本家に居るが、だからと言って、ずっとダラダラしている訳ではない。
「今日は天気が良いから、近くの公園でバスケの練習してくるよ」
「それは良いけど……道、分かる?」
「大丈夫。他の道も覚えたいから、ついでにおじいちゃんの家にも寄って行こうと思う」
「そう。じゃあ、おじいちゃんによろしくね」
「分かった。……そう言えば姉さんは?」
「もうとっくに出掛けたわよ」
「あっそ」
父さんの仕事の転勤が卒業と重なり、つい先日、僕達はおじいちゃんの家の近くに引っ越してきのだ。
今まで仲良くしていた友達と離れるのは寂しかったが、長期休暇しか遊びに行けなかったおじいちゃんの家に、徒歩十分で行けるのは嬉しい。何より、新しい場所での生活が楽しみで仕方無かった。
*
「おじいちゃん、元気だったなぁ……」
僕は今、おじいちゃんの家から公園に向かっていた。
おばあちゃんは二年前に亡くなり、おじいちゃんは一人暮しだった。だから、僕達が近くに引っ越してくる事をとても喜んでいたし、先ほど会った時も嬉しそうだった。
暇な時はなるべく会いに行こうと思いながら、いつの間にかたどり着いていた公園に足を踏み入れた。
すると他の音とは違う綺麗な音色が、風に乗ってどこからか聴こえてきた。
「……?」
音のする方へ進むと、その音は声になり、やがて声は歌になった。
それはとてもきれいで、澄んだ歌声だった。
歌声を追って道を曲がると、そこにあったのは、言葉を失うほど美しく満開に咲いた巨大な桜の木と、その木の根元で舞い散る桜の花びらに合わせるように歌っている女の子だった。