コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 共鳴のプラネット【1/12更新】 ( No.21 )
日時: 2014/01/17 22:14
名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)

 第1章 planet

 —————————Please destroy that.(誰か私を壊して)


「——新入生代表挨拶、白土夕映さん」
「はい」

 桃色の蕾が花開く頃、彼女の新しい扉も同時に開いた。
 夕映は無表情で、壇の上に立ち、マイクを前にする。一礼をすると、緊張しているともとれる程に淡々と暗記した文章を読み始める。ほとんどの生徒が面倒臭そうに聞いている中、興味津々に見つめている者が一部。

「あの新入生代表、めっちゃ可愛くね?」
「な! 今どき黒髪で色白な女子なんていないよな」

 不純な動機を持ちながら話している男子たち。
 そして、二年の並びからもひそひそと声が聞こえる。

「夕映ってそんなに頭いいのか?」
「そんなの昔からだろ。何でも、中学の時はすべてのテストで一位取り続けてきたらしいけど」
「は?」
「もはや嫌みだよな」

 伊織が響に聞いている。響は苦笑いしながら夕映の驚くべき真実を伝えた。伊織は度肝を抜かれたような顔をしている。いつの間にか、挨拶が終了した。夕映はまだ無表情で壇を下りた。



 入学式の翌日。一年の教室はざわついていた。
 すでに、代表挨拶を務めた夕映の噂は立っていた。噂の張本人は机の上で眠そうに頬杖をついているのだが。
 昼休みに入ると、皆打ち解けあいはじめ、数人のグループで昼食をとっているところもあった。

「ねえねえ、二年にすごいカッコイイ先輩がいるんだって!」
「本当!? 後で見に行こうよ!」

 女子ならではの「先輩見学」の話も出てきている。
 そんなざわつく教室の中、一人昼食をとる少女が一人。小説を片手に器用に箸を使っている。
 クラスの男子はそんな彼女を見つめていた。

「——ねえ、白土夕映っている?」

 教室の扉の近くの女子グループに声をかけた。それこそ、先程彼女たちが話していた「カッコイイ先輩」の伊織だった。
 少し赤くしながら一人が答えた。

「え? あっ、はい。窓際に……」

 当の夕映は伊織の存在には気付いていなかった。

「あのコミュ障どうにかなんないかな……」

 伊織の後ろから、響が顔を出す。また彼女たちの顔がより一層赤くなる。彼女たちの中では「皆はどっち派?」ということを聞きたくて仕方がないだろう。
 勇気を出して、グループのリーダー的存在が伊織を見ながら声をかける。

「あ、あのっ! 良かったらメルアド交換しませんか?」
「ん? いいよ。こーんな可愛い子に貰えるなら大歓迎」
「お前はまた……」

 素直に了承する伊織に呆れた顔を見せながら響がため息をつく。しかし、今日一日で新入生十五人ほどにメルアド交換を申し込まれたのに、一切断る響も逆の意味で問題だ。

「あ、夕映!」

 伊織たちがいる前の扉を避け、後ろの扉を開けた夕映に気付き、響が声をあげる。すぐさま彼女のもとへ向かう。

「声かけてくれたっていいのに」
「あの子たちと話しているみたいだったから……邪魔かと思って」
「邪魔なわけないじゃん。てか、夕映に会う為に来たんだから」

 そう言いながら、夕映の頭を軽く撫でる。そんな行動にも慣れたようにして、夕映はされるがままになっていた。
 クラス中の皆が「どういう関係?」と思ったことだろう。
 伊織も二人のもとへ向かった。

「夕映、昨日から携帯見てないだろ。面倒臭いからってちゃんと管理しろよ」
「ああ、うん。ごめんね。伊織みたいに常にメールや電話が絶えないなんてことないから」
「……お前、さりげに嫌み入れてるだろ」

 無表情で言うものだから、表情が読みとれなくて冗談か分からない、といつだか伊織が夕映に言ったことがあった。それ以降は冗談は控えていたが、また最近言うようになった。