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Re: 共鳴のプラネット【1/23更新】 ( No.26 )
日時: 2014/01/26 15:23
名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)

 第2章 マリオネット

 —————————Protect me.(誰か私を守って)

「——やあ、よく来たね」

 コツンコツンと靴音が響く。三つの音が。

「Yue、Iori、Hibiki」

 陸也が一枚のディスクを持ちながら笑顔を向けた。しかし、ケースだけでディスクは入っていないようだ。
 彼は高校生バンドplanetのプロデューサーだ。

「今日は、何のために?」
「これを見るためにだよ」

 そう言ってから、手に持っていたケースを机の上に置いてから、同じく机の上にあるリモコンを操作した。
 夕映の前にある大きなテレビが起動する。
 すぐに、音声が流れ始めた。


『今週のアーティスト特集はplanetです!』

 これは、昨日オンエアされたplanet特集の番組だった。毎週、ブレイクしそうなアーティストの特集を組んでいる。
 これを見ることが今日の目的らしい。


『プロフィールはアルファベットの名前しか表記されておらず、常にフードをかぶり、顔もなるべく見せないようにしているという、謎の多いバンドです』

『本日はそんなplanetの皆さんに来ていただきました!』
『planet ギターボーカルのYueです』
『planet ベースのHibikiです』
『planet ドラムのIoriです』
『早速ですが、質問タイムに入りたいと思います! バンド名「planet」の由来はあるんですか?』
『全員、名前に惑星の名前が入っているんです。衣装の色はその惑星の占星術の色に沿っています』

 
 幾つか質問が繰り返されていく。テレビを見ていた伊織は途中で声を上げた。

「何でこんなの見せるんだよ?」
 
 陸也はリモコンを操作し、一時停止してから言った。

「planetは今やこんなにも視聴者に浸透してるってことを分からせるためだよ」

 陸也はそう言ってから、視線を一瞬だけ夕映にずらした。伊織と響は気付かなかったが、夕映はなぜ陸也が自分のことを見たかに気付いた。

「今日はこれだけ! あ、この前のデモテープ良かったぞ」
「あ、ありがとうございます」

 陸也の言葉に響は礼儀正しく礼を言った。
 伊織と響を部屋から出し、陸也は半ば強引に夕映だけを部屋に残し、二人の時間を作った。

「——さて、自分一人だけ残された理由は分かるかな? マリオネットちゃん」
「その呼び方やめてもらえますか。不愉快です」

 このやり取りを何度したことだろう。陸也は夕映のことをマリオネットちゃんと呼ぶ。
 マリオネット——つまり、「操り人形」。

「だって、そうだろう。伊織や響に従っているだけなんだから」

 その言葉に夕映は苛立ちを覚え、陸也を睨んだ。
 陸也はそんな夕映に怯えることはなく、逆に挑発をしているようにおどけた口調で続けた。

「お前は何で歌っているんだ? ただ、母親から離れたかっただけだろう? 離れるきっかけってやつを作った二人に恩返しした気にでもなっているだけだろ。『仕方がなく』歌っているだけだ」

 夕映はその言葉を聞き、あまりの言われように睨むどころか手を出したくなるほどだった。
 しかし、同時に自分にも怒りを覚えた。
 陸也の言っていることに反論できなかったことが。あながち、間違いでもなかった。確かに、夕映の歌っている理由は純粋な気持ちだけではなかったからだ。

「……もういいですか? 伊織と響の元へ行っても」
「ああ。……しかし、二人がお前の気持ちを知ったらどうなるかなあ」
 
 今度の言葉は無視して、扉を開けた。




 三人は家へと戻った。
 現在、三人は共同生活を送っている。
 上京するために、伊織の祖父のコネを使って、この家をもらった。建築関係の会社の取締役であるからだ。
 最初は不安もあったが、随分と上手く生活出来ている。