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Re: 共鳴のプラネット【1/26更新】 ( No.35 )
日時: 2014/02/10 18:32
名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: j7.TiE4.)

 第3章 寝言

 ——————Tell me.(誰か私に教えて)

 日曜の朝。夕映は目覚ましの騒がしい音で目が覚める。
 隣のデスクに置いてあるポットでカップに水を注ぎ、一杯分飲み干す。これが夕映の日課だった。

 今日の朝食は響が担当だ。一番の早起きである彼ならこんな時間——午前七時三十分だが——にはもう起きているだろうと、自室を出て、一階に下りる。
 しかし、キッチンには響の姿はなく、ひょっとして……と、夕映はとある部屋へ向かった。

 一階にある部屋。それは、いわゆる「スタジオ」というものだった。音合わせや練習に夕映たちが使っている部屋だ。
 扉を開けると、デスクの上に頭を預け、ペンを持ったまま寝そべっている響を見つけた。

「響? 寝てるの?」

 そう言いながら彼に近づく。響は微かな寝息を立てながら眠っていた。デスクの上には歌詞が書かれた紙が無造作に置かれている。眼鏡が見当たらない。ということは、コンタクトであろう。昨日の夜からここで作業をしていたのだな、という予想を立てる。
 自分の羽織っていたカーディガンを響の背中にかけてやる。

「……お疲れ様」

 そう呟くと、夕映の左手首を響の右手が掴む。

「起きてるの?」

 夕映が問う。しかし、返答がない。寝ぼけているようだ。手を解こうとするが、なかなかいかない。
 手間取っていると、響が何か言葉を発していることに気付いた。

「夕映は……無防備すぎるんだよ……」

 自分の名前が突如発現されたことに驚いた。続きが気になってしまい、夕映は手を解こうとするのを無意識のうちにやめていた。

「だ、から……伊織に襲われてるし……」

 そう言った途端、夕映は昨日の夜を思い出す。伊織にからかわれていたところを目撃されていたのか……と、思い、急に恥ずかしくなってくる。

「こっちが我慢してるっていうのに……伊織の奴……抜け駆けしやがって……」

 我慢? 夕映はその言葉の意味を考える。数秒後、考えるのをやめ、すぐさまその場から立ち去りたいと思った。
 響の腕の力が緩む。すぐさま、夕映はその部屋を抜け出した。



 ——朝食の時、響と伊織と目線を合わせることが出来なかったのは言うまでもない。

                            第3章 完