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Re: 共鳴のプラネット【3/19更新】 ( No.68 )
日時: 2014/03/26 15:56
名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)

 第7章 いつかは

 どんな暴言を吐かれても、軽蔑されても夕映は何も言い返すことは出来ない。そう自分で気付いていたから、夕映は黙って次の言葉を待った。

「——夕映、ごめんな」

 思いもよらぬ言葉を吐いたのは響だった。夕映は驚きで声も出ない。
 どうして、謝るのだろう。悪いのは、すべてすべて自分なのに。そんな思い——疑問で一杯だった。

「俺等、夕映に無理させたんだな。夕映のこと、何も分かっていなかった」

 伊織が苦しそうな表情で夕映に言う。
 夕映は思わず大きな声を出した。

「どうして! どうして二人がそんなこと言うの……? 悪いのは、すべて私なのに。私が、二人のことを利用したんだよ」

 自分で「利用した」という言葉を使って、嫌気がする。二人の優しさを利用して、あの人から逃げたのは自分のせいなのに。

「夕映、もういいよ。ずっと苦しみの中にいたのは夕映だから」

 伊織が優しい言葉をかける。絶対に夕映を攻めはしなかった。申し訳なくなるほどに。

「俺たちは、夕映に歌うことを強制はしないよ。だけど、俺たちが夕映の為に演奏したいってのは本当だ。夕映が抜けるのならば『planet』は解散する。その覚悟は俺にも伊織にもある」

 伊織と響が真っ直ぐに視線を向けてくる。
 夕映の答えは決まっていた。しかし、言っていいものなかの悩んだ。この答えを、二人は受け入れてくれるのか。

「——歌いたい」

 その言葉は、三人が出会った時、夕映が「外に出たい」と言った時のようで。

「純粋に、歌っていたい。誰かに声を届けたい。だって、それが私の存在価値だから」

 強い瞳をして言った夕映に、伊織が手を差し伸べる。昔そうしたように。夕映に手を伸ばす。
 夕映は、しっかりとその手を握った。







『私、歌っていたい。たとえ、貴女が何と言おうと、私は歌っていたい。所詮自己満足です。でも、私の声が誰かに届くのであれば、声が枯れるまで歌っていたいです。いつか、私の声が求められなくなる日まで、私は絶対に『planet』をやめたりなんかしません』

 自分の決意を書いたメールを、夕映は母親に送信した。
 たとえ、何を言われようと諦めないと誓って。



                            第7章 完