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「僕、戦います」

　そう決心した。紀伊さんは優しく微笑んでくれた。

　そして現在、あの長い廊下。無言が続いている。喋ろうにも喋れない。喋れる空気ではない。
　よく考えたら分かる。ここは、親も血の繋がった人もいない、天涯孤独の子供たちが集まる場所。だから、ここにいる紀伊さんも——。そう思うと、上手く言葉が出ない。知っていたんだ、紀伊さんは。僕に血の繋がりがある人がもういないことを。そして、紀伊さん本人にもいないことを。

　長かった廊下を右に曲がる。でも、ここは違う。僕がさっきいた部屋は、もっと先のはずだ。一体、どこへ。

　先へ先へと紀伊さんはどんどん進んでいく。僕の足は限界を超えていた。もう、歩くのも辛い。
　でも、ここで挫けてどうする。さっき決心したばかりなんだ。紀伊さんだってきっと当時は僕と同じなんだ。
同じ、弱かった女の子。
不謹慎ではあるが、そう思うと心が和らぐ。一人じゃない。この残酷な運命にあっているのは一人じゃない。同じ、仲間がいる。一人じゃない。そう思ったら少しだけ気分が楽になる。

　だから、進める。


　そうだ、僕は戦うんだ。
　僕はその言葉を心の中で叫び、自分を奮い立たせた。