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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: モノクロ:コード【参照200感謝!】【瑠璃プロフ更新】 ( No.62 )
- 日時: 2014/01/17 20:05
- 名前: 紗銀 (ID: c1MPgv6i)
僕たちが今いる場所は鮮やかに大人の綺麗な字で彩られた『コード:02 紀伊』と書かれている板が垂れ下がっている看板の前。言うまでも無く、紀伊さんの部屋の前だ。移動の間は沈黙が続いていた。瑠璃は普段の様に振舞っていたのだが、どうもあの涙を見た後に理解しろと言われても無理がある。そもそも僕にそんな技術なんてないのだから。
「姉御の部屋ですっ!」
瑠璃は紀伊さんのことを姉御と呼ぶ。姿や振る舞いを見るとその呼ばれ方はとても納得がいく。しかし僕はそんなことより瑠璃のほうが気になっていた。いつもと変わらない。だが、違和感。何か不安をむりやり取り押さえたかのような声。僕には分かる。昔ずっとそうやって生きてきたのだから。
「明人さん?」
可愛らしく瑠璃が覗き込む。それは背が背であることからなのだが。
「瑠璃……」
僕は反射的にそんな声を出してしまう。
「い、いや。何でもないよ。それよりここが紀伊さんの部屋なんだね。さすがって感じだね」
しかしそんな声をすぐさま僕は打ち消す。いや、正確には打ち消すように上書きをした。
「そうですよねっ! さすが姉御ですっ!」
気を利かしてくれたのだろう。分かってしまうのだ、今は。だって自分でも分かってしまったんだから。だからきっと瑠璃も分かったんだろう。
——自分の言動が僕を不安にさせてしまったのだろうと。
ふと見た瑠璃の顔には、もう涙など無かった。いつ拭き取ったかは分からない。少なくとも僕にはそんな行動見えなかった。なら、元々涙など無かったのか。
でもそれは自信を持って否定できる。……自信を持つことじゃないが。
瑠璃が少しだけ見せた不安なのだ。僕は見逃したりしない。きっと彼女は何かを隠して明るく振舞っているのだから。
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